小田谷嘉弥、田仲謙介、清水武彦、宮脇佳郎
神奈川県におけるオオセッカの初標識記録と越冬個体数
Yoshiya ODAYA,Kensuke TANAKA,Takehiko SHIMIZU and Yoshio MIYAWAKI:First banding record and wintering population of Japanese Marsh Warbler in Kanagawa Prefecture
【要 約】
神奈川県三浦市三戸地区における、オオセッカの初標識記録を報告した。2009年から2011年の越冬期に最大4羽の生息を確認したが、正確な生息数推定には追加の捕獲調査が必要である。将来の潜在的な繁殖地を担保するためには、本調査地のような小規模な環境でも保全していくことが重要と考えられる。
こまたん平塚市におけるコムクドリの塒で採集される羽の季節変動
KOMATAN Bird Watching Group:Seasonal variation in feather gathering
at Violet-backed Starlings roost in Hiratsuka City
【要 約】
平塚市の中央部に位置する平塚市総合公園のコムクドリの塒で2010年7月2日~9月27日にかけて落ちている羽の採集調査と、平塚市総合公園の西約2.0kmに位置する塒前集合地の金目川での個体数調査を行った結果、次の様なことが明らかになった。
1)観察地(平塚市)でコムクドリを観察できたのは7月4日~9月29日。その期間に塒で初列風切羽(P)、次列風切羽(S)、尾羽(T)が落ちていたのは7月5日~9月26日の84日間であった。
2)成鳥ではP7・P8のピーク期間が終了した後にP9のピーク期間が終了した。一方、幼鳥ではP7・P8のピーク期間終了がP9よりも後だった。
3)幼鳥の羽の割合は、初列風切羽での比較で、P1~P6:7.5%、P7・P8:23.2%、P9:22.8%で、P7以降の7/15~9/26の間は成鳥、幼鳥の初列風切羽の比率はほぼ同じであった。
4)成鳥オス・メスP9の羽の長さは、最大値:94mm、最小値:81mm、最大・最小値の差は13mm、平均値:87.3mm、であった。
幼鳥のP9の羽の長さは、最大値:91mm、最小値79mm、最大・最小値の差は12mm、平均値:84.7mmであった。
5)P9の羽の長さと羽柄の長さは幼鳥から成鳥への変化として羽の長さは長くなっているが、羽柄は逆に短くなっている。P9の羽弁の幅は、幼鳥は幅が広く、成鳥になると細くなっている。
結果としてP9は幼鳥(幼羽)から成鳥(第1回冬羽)への成長で、「幅広く短い形」から「細く長い形」へと変化していることがわかった。
6)初列風切羽の先端部に磨耗した部分がある羽が多数見つかった。これらの磨耗は一番外側のP9や次列風切羽、尾羽には見つかっていない。また幼鳥の羽にも全く見つかっていない。
7)初列風切羽の先端部の磨耗の成鳥オス、メスでの比率は採集したオスの羽の80.3%、メスの羽の94.2%にあり、メスの比率が多かった。
8)野外観察で、観察された同時換羽枚数は2枚~3枚であった。
9)今回確認できた個体数は、拾った羽からはP9(右翼)で最大の342羽分であったが、野外(金目川)で観察した最大の個体数は9月13日の1,863羽だった。
田淵俊人山間地の相模湖駅(相模原市緑区)で営巣したイソヒヨドリ
Toshihito TABUCHI:Breeding status of Blue Rock Thrush in the mountainous area of Sagamihara City
【要 約】
本来は海岸に生息するイソヒヨドリが、2012年2月23日から2012年6月30日までの期間にわたり、神奈川県相模原市緑区の山間地であるJR中央線相模湖駅付近において3年連続して営巣した。本年は2つがいが営巣、繁殖して4羽の巣立ちヒナが確認された。2012年から相模原市内でもイソヒヨドリが頻繁に観察されるようになっていることから、年間を通しての今後の動向が注目される。
富田小百合・倉本 宣浦安市における野鳥のヤシ類の利用
Sayuri TOMITA and Noboru KURAMOTO:The use of palm trees by birds in Urayasu City
【要 約】
浦安市の新町地域ではリゾート施設の影響もあり、街路樹として多くのヤシ類が植栽されている。これらのヤシ類は特徴的な樹形を持ち、外来種であるが、在来種の街路樹よりも鳥類が利用していたことが本研究から明らかとなった。ヤシ類を利用した鳥類は、樹皮の凹凸、葉、葉柄、果実を利用しており、在来種のように枝がない樹木でも鳥類は利用できることがわかった。
杉山智美・中村忠昌・倉本 宣葛西臨海公園鳥類園におけるシギ・チドリ類の渡来状況と来園者の意識から見た現状と課題
Tomomi Sugiyama, Tadamasa NAKAMURA and Noboru KURAMOTO:Sandpiper and Plovers species at the bird sanctuary in Kasai Rinkai Park that were observed and noted by visitors
【要 約】
鳥類園は自然環境の回復や保全の機能とともに、都会に住み普段自然との接点が少なくなっている人々にとって、自然に触れることで鳥類に親しめる機会を与え、興味・関心を引き出す役割も果たしていた。鳥類園の来園者は展示や掲示物、解説板、チラシやパンフレットの利用が多いことから、季節ごとに観察される鳥類のリストや、よく観察される種に絞った解説板を設置するなど、これらをより充実させることで、鳥類園の利用のしやすさや満足感を得ることにつながると思われる。展示も季節ごとに入れ替えることで、季節によって変化する自然の姿に気づくことができる。
鳥類園の今後の管理にあたっては、鳥類等の自然資源と鳥類を観察する人間どちらも考慮して進めていくことが望ましい。来園者の要望として、観察窓や観察小屋の増設が挙げられた。鳥類に対する影響を少なくするとすれば、現在ある観察窓の大きさを広くする、観察しやすい高さに変える、観察の妨げとなる植栽を刈ることなどが代替案として考えられる。
鳥類は人間との接近を警戒し、ある程度以上遠くの距離を保とうとする傾向にあるとされているが、人為的要素が鳥類の生息状況に与える影響について考察した研究例は少ないため、今後知見を増やしていくことが求められる。人間が鳥類に及ぼす影響と、人が鳥類観察活動で求めることの両方を把握することが、今後の鳥類観察施設の設計や管理に必要である。
石井 隆・葉山久世・加藤ゆき外来種カナダガン有害捕獲までの諸問題
Takashi ISHII, Hisayo HAYAMA and Yuki KATO:Harmful problems with the introduced Canada Goose
【要 約】
1.Binos 17号 (2010) 報告以降の外来種カナダガンの有害捕獲に関する問題点を整理した。
2.特定外来生物のアライグマ対策に費用と時間がかかる現実と動物福祉上の配慮から、外来生物対策は初期段階の個体数制御と生態系からの除去が重要であるとの認識を得た。
3.外来生物の捕獲は拡大前の「初期消火」が重要となるが、個体数が少ないうちは、被害を証明しにくい。要注意外来生物では、十分な被害の証明ができなくても生態系被害を理由とする捕獲をしやすくする仕組みが求められる。
4.2012年4月、5月の富士河口湖町でのカナダガン有害捕獲の概要を記した。
5.第11次鳥獣保護事業計画が2012年4月に改訂され、外来生物の捕獲手続きは若干緩和された。
6.第11次鳥獣保護事業計画でも、外来生物の生息自体が生態系に影響があると解釈した場合、だれが申請者として適切なのか明確にされてない事が分かった。
宮脇佳郎・柴田久元・永嶋省吾三浦半島におけるシマアオジ Emberiza aureolaとコホオアカ E.pusillaの観察記録
Yoshio MIYAWAKI,Hisamoto SHIBATA and Syougo NAGASHIMA:Observation records of
Yellow-breasted Bunting Emberiza aureola and Little Bunting E.pusilla at Miura Penninsula
宮脇佳郎ほかの鳥の声を真似て鳴くメジロ
Yoshio MIYAWAKI:Japanese White-eye mimics other birds voices
鈴木藤子・谷脇美雪・酒井明子・青木雄司丹沢で見つかった分娩途中に死亡したカモシカ
Fujiko SUZUKI,Miyuki TANIWAKI,Akiko SAKAI and Yuji AOKI:Rustic Bunting that had died while delivering in found Tanzawa
金子精一・金子光江・平野角治・小林みどり相模川中流域におけるコアジサシの繁殖行動
Seiichi KANEKO, Mitsue KANEKO, Kakuji HIRANO and Midori KOBAYASHI:Breeding Behavior of the Little Tern at Sagami River
丸岡禮治箱根町・仙石原湿原および早川上流における定線センサスの結果-2006年~2011年のまとめ-
Reiji MARUOKA:Results of fixed course bird census in Sengokuhara Wetlands
and Hayakawa River from 2006 to 2011
後藤裕子鳥と木の実 神奈川県立津久井湖城山公園の秋冬季(2009-2012年9-2月)
Hiroko GOTO:Birds and berries: Autumn and winter in Tsukui-Shiroyama Park (Sept.-Feb. 2009-2012)
白石瑛子観察された野鳥の変遷からその原因を考える
Tamako SHIRAISHI:Thoughts on the changes in observed birds