BINOS vol.5(1998)


BINOS vol.5:1-8(1998)
等々力緑地におけるサギ類の就塒個体群について

 五十嵐秀明

 【要約】

 神奈川県北東部に位置する等々力緑地におけるサギ類の就塒個体群について,1996年1月から1997年10月にかけて調査し,次の結果を得た.

 等々力緑地では6種類のサギ類が観察された.このサギ類のねぐらの優占種はコサギであり,次いでゴイサギおよびダイサギが多く見られた.また,ゴイサギ,ダイサギ,コサギでは繁殖が確認され,これら3種のサギ類は年間を通して当地にねぐらを形成していた.サギ類が最も多く見られた時期は繁殖によりヒナが巣立ち始める6月頃であったが,シラサギ類は秋期にも多くの個体が観察された.

 就・離塒調査とねぐら内部の直接カウントから算出された繁殖期のサギ類の個体数は,コロニー内で営巣するサギ類の姿が外部からは見えないことがあるために,実際より少ないものと思われた.繁殖期にねぐらを利用するサギ類の個体数調査の精度を上げるためには,就・離塒調査とあわせてサギの種ごとの巣数を調査する必要がある.

 等々力緑地のねぐらを利用したサギ類の主要な採食場所として多摩川が推測されたが,その他の採食地を詳細に検討するには,さらに飛来飛去の方向を追跡調査する必要がある.


BINOS vol.5:9-16(1998)
サンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata の抱卵および育雛行動について-森戸川周辺における1993年~1996年の観察のまとめ

 山田靖子

 【要約】

 1993年から1996年の4年間,三浦半島二子山においてサンコウチョウの観察を行った資料にもとづいて繁殖にかかわる行動の詳細をまとめた.

1.抱卵時間は雌が雄より長かったが,全期間を通じて雄も抱卵を行った.なわばりが安定してくると雄の抱卵時間が増えてきた.雌の抱卵時間が一番長かったのは中期であった.

2.給餌は雄,雌共に行った.雛の成長に合わせて餌を運ぶ回数が増えた.全期間を通して15時以降の給餌回数が多かった.

3.抱雛時間は雌が多かったが雛の体温調節機能が高まると共に減少し,後期はほとんど抱雛しなかった.

4.糞処理は給餌後雄,雌共に行った.前期は糞食べのみで,後期は糞捨てのみであった.中期はわずかに糞食べが見られた.


BINOS vol.5:17-22(1998)
相模原市東林間における市街地の鳥類相の変化

 竹内 裕

 【要約】

1.相模原市東林間において1991年1月から1992年12月と1996年10月から1997年9月にラインセンサス法により鳥類の個体数調査を行った.その結果,当地では18科37種を記録した.

2.年間の調査結果から,5~7月の繁殖期と12~3月の越冬期の平均個体数を算出し,3倍以上になった種を増加,3分の1以下になった種を減少とした.

3.増加した種はメジロ,アオジ,ハシブトガラスの3種で,メジロは繁殖期,越冬期ともに,アオジ,ハシブトガラスの2種は越冬期に増加した.減少した種はカワラヒワ1種で繁殖期に減少した.

4.増加した種の要因としては,調査内の樹木の成長や実のなる植物の植栽などが一因として,減少した種の要因としては調査地周辺において畑地や空き地の減少などが推測された.


BINOS vol.5:23-30(1998)
丹沢山地におけるニホンカモシカの生息状況

山口喜盛・中村道也・渡邊憲子

 【要約】

1.丹沢山地のカモシカの生息状況を知るために,1997年 6月に郵送によるアンケートを行い1997年9月から12月に聞き取り調査を行った.

2.カモシカは,丹沢山地全域の広い範囲に生息していることがわかった.

3.モシカの垂直分布の中心は400~800mで,標高の高い所及び低い所ほど少ない傾向がみられた.

4.カモシカの保護状況は西丹沢に多く集中し, 2月から 5月の春先に多く発生していた.また,疥癬にかかったカモシカが救護されたり,人工構造物による事故や幼獣の誤認保護など人為的な事故がいくつか起きていた.


BINOS vol.5:31-36(1998)
水辺の生物のために設置したいかだの利用状況

 松田久司・小杉慶子・福岡秀美・山崎宏・山口博一

 【要約】

 三浦半島北部に位置する「横浜自然観察の森」のミズキの池において,いかだの動物の利用状況を調べるために,観察カードによる調査と補修時の観察を行った.
これにより,谷あいをせき止めて作成され,岸が切り立った池において,いかだを設置すると,動物が以下のような利用をすることが,考えられる.

1.カモの仲間が休息,採餌と羽づくろいの場所として利用する.

2.サギ,カメ,およびカエルの仲間が休息の場所として利用する.


BINOS vol.5:37-51(1998)
鶴見川で越冬したアカガシラサギの観察記録
 中川 博史

 【要約】

 1996年12月から翌年4月まで,鶴見川中流域に飛来した1羽のアカガシラサギを観察した.

1.出現日数は19日で,昼~夕方に高い確率で現れた.

2.最も多く出現したのは鴨居川との合流点付近の約300mの区間内,草と土に覆われた左岸の岸辺であった.

3.静止,休息,整羽,歩行,採食,排泄,飛翔等の行動が見られた.

4.行動の大半は2の地点での長時間の静止であった.他の行動中にも短い静止を繰返した.

5.飛翔は,はばたきにリズムがなく,スピードは遅く,安定感がなかった.飛行距離は300m以内が多く,堤防の外に出て遠くまで飛去したのは1回だけであった.離着陸地点はほとんどが左岸の岸辺だった.

6.汀線付近のほぼ平らなところを嘴でつつき,小さな生物を採食した.

7.ハシブトガラス・コサギからは攻撃を受け,カワセミに対しては攻撃を仕掛けた.他の鳥・動物等から逃げることもあった.飛来当初の人に対する警戒心は強かった.


BINOS vol.5:53-56(1998)
丹沢山地におけるホシガラスの越冬

 山口喜盛

 【要約】

 丹沢山地に秋冬期渡来するホシガラスの記録を整理した.

1.丹沢山地に渡来するホシガラスは,ブナの実のなりのよい年にブナ林に渡来し,ブナの実を主要な食料としていた.

2.丹沢山地に渡来するホシガラスは,国内の繁殖地において,木の実が不作だった時に食料を求めて渡来する事が推測され,一方では,国外から別亜種ハシナガホシガラスが渡来している可能性もあることを指摘した.


BINOS vol.5:57-62(1998)
神奈川県におけるオオコノハズクの繁殖初記録
 西川敦人・山口喜盛


BINOS vol.5:63-66(1998)
カワガラスの巣材を洗う行動の観察

 吉田嗣郎


BINOS vol.5:67-72(1998)
神奈川県内で観察した北米大陸産のカモメ類について

 氏原巨雄・氏原道昭


BINOS vol.5:73-74(1998)
相模原市新戸で拾得されたハリオシギについて

 今井宗丸・浅子明


BINOS vol.5:75-80(1998)
相模川水系におけるカワウの分布状況調査(第1報)

 日本野鳥の会神奈川支部


BINOS vol.5:81-88(1998)
海老名市勝瀬の休耕田に渡来した鳥類(1997年秋期)

 日本野鳥の会神奈川支部


BINOS vol.5:89-93(1998)
神奈川県内における鳥類の写真記録 4
 -県内における希少な鳥類-

日本野鳥の会神奈川支部鳥類目録編集委員会


BINOS vol.5:94-98(1998)
神奈川県内における鳥類の写真記録 5
 -野外で観察された外国産の鳥-

日本野鳥の会神奈川支部鳥類目録編集委員会