2003年の保護研究部の活動  

        

      
2003年に,神奈川支部が関わった保護研究活動について,その経緯を紹介する.


●カイツブリ関係
三浦市の造成地の池で、工期の関係でカイツブリの生息が確保できなく可能性がありました。そこで京浜急行と協議の結果、工事方法や工事時期の検討を行い。カイツブリの繁殖終了まで生息場所の確保が行われました。参考までに以下の書類を掲載します。
追記:2004年2月になりこの池に残っていた若鳥を捕獲して、小松ヶ池に移動させたという情報が寄せられた。この件は、違法による捕獲にあたります。事後であったため対応は取りませんでしたが、開発行為のために捕獲をする事は許されない事である。

資料 京浜急行電鉄に提出した要望
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京浜急行電鉄株式会社 平成15年5月25日
地域開発本部 企画開発部御中
総務部御中
    日本野鳥の会神奈川支部 支部長 鈴木茂也

       繁殖中の野鳥「カイツブリ」の保護について(要望)
 初夏の候、貴社におかれましてはますますのご健勝のこととお慶び申し上げます。
 また、当会の主旨を深く御理解頂き、法人特別会員としての御協力ありがとうござい
ます。
 神奈川支部は、約四千名の会員を有し、野鳥を通した自然保護活動をしています。
 この度、三浦市三戸・小網代地区を対象とする「緑農住区関連開発土地基盤整備事業」の一環として、同市三戸地区検上橋のため池において、5月26日より水抜き工事が行われることと聞き及んでおります。
ため池には、現在カイツブリが繁殖中と、当会員より報告を受けております。カイツブリの雛が成鳥となり、親より自立するまでには、その食・住すべてにおいて水面が使われます。この水抜き工事の遂行により雛が殺傷される可能性が極めて高いと考えられます。
野鳥を死傷に至らしめる行為は、【鳥獣保護法】第1条の5の1項「狩猟鳥獣以外の鳥獣は其の捕獲(殺傷を含む)を為すことを得す」とあり、違法行為になります。
 県内での鳥獣保護法の関係した例としては、「伊勢原市高森サギ山伐採事件」があり
ます。今回ときわめて近いケースと考えられますので、その経緯を記します。
*現在は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律
*第8条:鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう)をしてはなら ない。

①伊勢原市の開発予定の私有地の林で、サギが繁殖した。
②地権者と、委託工事業者が林の伐採を計画
③当会、県の緑政課、伊勢原署などが鳥獣保護法違反であるため、伐採中止を要請
④工事業者は、雛や卵がいることを認識しているのにも関らず、伐採実施
⑤雛や卵が落下、当会会員、県の自然保護センターなどで救出するが、死傷も発生
⑥マスコミの多くで報道
⑦環境庁(現在の環境省)は、県緑政課からの問い合わせに対し、平成11年9月30日付 けで、県、及び全国へ以下のような見解を通達。(旧鳥獣保護法)
「行為者が、営巣木に現に雛又は卵が存在し、その営巣木を伐採することによりそれらが落下し、殺傷又は損傷を与えることが明白である場合に、それを認識しつつ伐採を行ったときは、その対象が狩猟鳥獣以外の雛であれば鳥獣保護及び狩猟に関する法律第1条の4第1項に、狩猟鳥獣類の雛及び鳥類の卵であれば同法第2条に抵触するものと考えられる。」

この通達で、
イ)工事予定地が例え個人の所有する土地であろうとも、行為は違法
ロ)救出とは関係無く、それ以前に、雛の生活基盤を(サギでは林の伐採、カイツブリは水抜き)破壊する行為自体が違法ということがあらわされました。

⑧よって神奈川県警は横浜地方検察庁へ送検を行いました。
(要望の内容)
●今回の水抜き工事は、林の伐採を、水抜きとおきかえれば同例と考えられるため、工事の延期や工事方法、工程順序等の変更を検討されるようお願い申し上げます。
 貴社におかれては、横須賀のYRPでの工事では、トウキョウサンショウウオなど貴重な生き物との共存をはかる工事や、長野ではフクロウの巣箱の設置など、取り組まれており、今回もカイツブリとの共存について御配慮頂けるようお願いします。
  なお、当会はあくまでも野鳥の繁殖の保護を要望するものであり、この開発土地基盤整備事業そのものの中止を要望するものではないことを、最後に申し添えます。

付記 カイツブリの情報
①環境庁の緑の国勢調査では、減少の著しい傾向がでている
②繁殖は浮き巣が使われ、孵化後の雛は、飛べず、水面のみで生活する
③餌は小魚、エビ、オタマジャクシなどで、潜水してとるため、水深が必要
④成鳥になるまでに、3ヶ月から半年程度必要
⑤成鳥になるまで、親が給餌するため、親子がそろう必要がある
⑥県内では保護しても育てられるプール等の施設はない
⑦5月24日現在、成鳥2羽、雛が2羽繁殖中
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資料 京浜急行電鉄株式会社に提出した意見
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2003.7.5
京浜急行電鉄株式会社
地域開発本部 企画開発部御中
日本野鳥の会神奈川支部
支部長 鈴木 茂也

 貴社におかれましては、当方のカイツブリ保護の要望に対して多大なる御理解ご協力をいただき、誠にありがとうございます。このたびは施工計画書をいただきまして検討致しましたが、工事方法、工事区域、工事時期については基本的には了解致しました。以下の要望をさせていただきますので、ご協力お願いします。

①隠れ家としてアシをのこして下さい(地点A)
②餌の生き物を守るため薬品、油など水質を汚染する物質の池への混入をしないようにして下さい。
③水質、水量を安定させる為、谷戸の絞り水の流入を止めないで下さい。(地点B)
④水質の変化や、土砂の流入を止め、餌動物を取りやすくするために絞り水の流入のせせらぎの護岸工事などをしないでください。(地点B)
⑤水深を一定量確保し、積極的に排水しないでください。
 (水害のおそれがあるときを除く)
⑥工事の休みの土日には、許可をいただく事で観察をさせてください。


・カイツブリの状況
カイツブリは現在成鳥2羽、最初の幼鳥2羽、そのあとの1羽、7月中に生まれた最後の1羽がいます。一番最後に生まれた雛は、まだ自力採餌は無理で、親から餌をもらっています。ただ、水中に潜る練習中で、自力採餌は可能になりつつあります。他の雛は、自力採餌を確認しました。飛ぶのはまだできない雛がいます。
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●丹沢談話会について
丹沢大山総合調査が予定されている中で、丹沢の鳥類について支部では以下の有志が「丹沢鳥類談話会」が開催された。開催のお知らせを掲載する。

「丹沢鳥類談話会」へのお誘い

丹沢の鳥類に関心を持つ皆様へ
 丹沢の自然生態系は、都市の開発圧力の影響や、ブナの立ち枯れ、スズタケの衰退、シカによる林床植生の採食圧などによって、その変化が進んでいます。このような丹沢の自然生態系の変化は、丹沢に生息又は飛来する鳥類にも影響を与えていると思われます。
 丹沢の鳥類については、いろいろなグループや個人レベルで、調査や観察が行わています。しかし、丹沢山域の広さと深さから考えると、その鳥類相や分布の全体像をつかむには情報交換が特に重要だと考えられます。
 そこで、丹沢の鳥類について気軽に話し合い、共通認識を持てるような場を作りたいと考えました。丹沢の鳥類相について見識の深い方、調査を進めている方を順次お招きしてお話しを伺うことや、それぞれが行っている調査観察についての差し支えのない範囲での情報交換などを行おうという計画です。
 また、県の自然環境保全センターでは、丹沢の生態系の保護管理に取り組み始めています。しかし、シカや植生の問題が大きくて、鳥についてまで手が回らないのが現状のようです。将来的には、鳥についての情報提供などを通じて、保全センターの助けになるようなことができればとも考えています。
 第1回として、下記の催しを設定いたしました。ふるってご参集ください。
日時 7月5日(土) 午後2時~5時
お話 「丹沢の鳥の今昔」高野凱夫氏(日本野鳥の会神奈川支部幹事)
場所 プロミティあつぎビル8階D会議室(電話046-221-7838)
     小田急線本厚木駅北口徒歩5分(イトヨーカドー、ラオックス近く)
  参加費 300円
呼びかけ人 脇田信雄・浜口哲一

●ガンカモ調査の新聞発表について
神奈川新聞の神奈川県が行うガンカモ調査の内容について以下の要望を行った。

資料 緑政課あての要望書
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                                   2003.2.1
神奈川県環境農政部緑政課長 水田秀子様

   日本野鳥の会神奈川支部  支部長 鈴木茂也

1月31日付け神奈川新聞ガンカモ生息調査記事について(要望)

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、神奈川新聞1月31日の「県ガンカモ生息調査」の記事について、以下の通り要望します。よろしくお願いします。

 記事の中でガンカモ科鳥類の減少の原因として「相模川などで増え続けるカワウに追いやられた」としています。カワウの生息地に生息するカモは淡水性のカモで、淡水性のカモは食性は植物食です。魚食性のカワウと食性が異なります。食性でカワウに追いやられる科学的な理由は無いものと考えています。一時的なカワウの増加で、場所の占有面でカモ類が追いやられる事はあると思います。しかし、その事がとりわけガンカモ全体の個体数を減少させる原因になりません。
 ガンカモ調査は科学的で客観的なデータの積み重ねが重要です。科学的な裏付けを、踏まえた結果報告を行うよう要望します。
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資料 神奈川県からの回答
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平成15年2月6日

日本野鳥の会神奈川支部
支部長 鈴木茂也 様

神奈川県環境農政部緑政課長
水田 秀子

1月31日付神奈川新聞ガンカモ生息調査記事について(回答)

本県の自然保護行政につきましては、日ごろからご理解とご協力を頂き、厚くお礼申し上げます。
さて、標記記事のカワウの影響に係る部分についてですが、ガンカモ調査の調査員からの報告で、河川等で休息しているカワウの周辺にはカモ類が少なかったことから、体の大きなカワウを小型のカモが敬遠をしているのではないかと考えられる旨、新聞記者の取材に対して現況説明したものでございます。しかし、その際、カワウとカモ類は食性が違うため、餌資源を奪い合い、カワウがカモ類を駆逐することはありえないこと、したがって、県内のカモ類の減少の直接原因にならないことを新聞記者に伝えなかったことが、誠に遺憾ながら誤解を招く結果となったものでございます。今後、このような誤解を招かないよう適切な対応に努めてまいりたいと考えております。
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●鶴見川の河川区域について
支部会員から方から鶴見川の河川地区の利用に対して問題提起がされました。支部では以下の質問をおこない、河川地区の利用について提起を行いました。

資料 神奈川県に提出した質問
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                                    2003.2.15
神奈川県横浜治水事務所長様

   日本野鳥の会神奈川支部  支部長 鈴木茂也

鶴見川の河川区域の利用について(質問)

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃からの自然保護行政への取り組みに感謝いたします。
さてJR鴨居駅周辺の鶴見川の河川区域内と思われる地区(鴨池人道橋から中原街道落ち合橋周辺)には、造成した野球グランド、サッカー場、大きな耕作地が見られます。河川区域内の利用に当たっては、河川法上の制限があると思います。以下についてご質問いたします。よろしくご回答頂ければと思います。

1.野球グランド、サッカー場、大きな耕作地は、私有地なのでしょうか。
2.上記の利用は、河川法上問題は無いのでしょうか。

(参考)
河川環境は、生物の多様性に重要な位置にあります。上記地区はアシなどが生える事に 
よりオオヨシキリ・セッカなどの野鳥の重要な繁殖地になります。河川環境を利用する
生物相は、近年急速に個体数・生息場所が減少しています。
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資料 神奈川県からの回答
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平成15年3月20日
日本野鳥の会神奈川支部
支部長 鈴木 茂也様

神奈川県横浜治水事務所長

鶴見川の河川地域について(回答)
日ごろから県の河川行政についてご協力いただきありがとうございます。
さて、平成15年2月17日付けで受理いたしましたご質問について、次のとおり回答します。
1.一級河川鶴見川の河川敷には一部民有地も含まれています。ご質問の箇所についても含
まれていると思われます。
2.民有地における耕作は所有権に基づく行為として違法ではありません。
 また、河川は誰もが自由に利用できる共有の財産であり、河川法に基づく河川管理者の許可を得ずに特定の法人、個人が独占的に継続して使用することはできません。河川敷の一部がグランドや不法耕作に使用されていることは承知しており、地元市町村と使用方法について相談をしております。

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●コアジサシ関係
・6月4日東京支部主催の「東京湾のコアジサシの今」の討論会に石井隆が神奈川県内のコアジサシの生息状況を発表した。千葉県や東京都との情報の共有などの連携が期待される。

資料:東京支部の案内
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 日本野鳥の会東京支部主催室内例会  2003年6月4日(水)夜6時半~9時

  討論会「東京湾岸のコアジサシの今」

レッドデータブックで「絶滅危惧Ⅱ類」として記載されているコアジサシは、国内だけでなく、地球規模でその数が減っていて、将来が心配されている水鳥です。東京湾岸でも適当な営巣環境がなく、彼らは繁殖に苦労しているのが現状です。われわれは彼らに何が手助けできるのか。それを考えるためには実態を知る必要があります。
 東京湾に臨む千葉・東京・神奈川での現況を知る人に一堂に会してもらい、みんなで良策を考えていきたいと思います。一般の方も自由に参加できます。

〈コアジサシの現状とこれからを語る人〉
    千葉から・・・早 川 雅 晴(千葉県立船橋法典高校教諭)
    東京から・・・田久保 晴孝(日本野鳥の会東京支部幹事)
    神奈川から・・石 井  隆(日本野鳥の会神奈川支部幹事)
    多摩川から・・広 田 行 雄(世田谷の野鳥環境を考える会)
    森ヶ崎から・・増 田 直 也(リトルターン・プロジェクト代表)
      司会・・・川 内 博     〈敬称略〉

会場:渋谷区立千駄ヶ谷区民会館2階ホール
  (JR山手線原宿駅または地下鉄千代田線
     明治神宮前駅下車、徒歩7分) 〈地図〉
開場:6時 開演:6時30分 終了:9時        
参加費:300円  先着:250名
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・酒匂川では、小田原市が「コアジサシ郷作り」を実施した。
資料:コアジサシの郷作り





 ・相模川では、引き続き中流域でコアジサシの繁殖場所が確保された。

・川崎市のコアジサシについて
川崎市では、都市基盤整備公団が所有する2ヘクタール程度の造成地にコアジサシの営巣地が出来た。多摩川河口野鳥クラブと田村氏が中心となり協議を行い。営巣地の確保に繋がった。

資料 都市整備公団への要望書
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平成15年6月9日
都市基盤整備公団
神奈川地域支社長 嶋田征次殿
日本野鳥の会 神奈川支部
支部長 鈴木茂也 

川崎区大師河原の貴公団管理地でのコアジサシの繁殖に関するお願い

時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
本会は野鳥の観察を通じての自然環境保全を目的とした市民団体で、神奈川県内に約3千5百人の会員を有しております。
貴公団が管理されている川崎市川崎区大師河原一丁目の工場跡地には、渡り鳥であるコアジサシがこの5月から飛来し、現在200羽以上が営巣・繁殖に入っています。
コアジサシは、はるばるオーストラリアから日本へ子育てをするため渡ってくる水鳥ですが、近年営巣地となる自然の河原や砂浜などが減少したため、その数が減少し、環境省の[レッドデータブック]で[絶滅危惧2類]に分類されています。
大師河原一丁目の当該地では、土地を管理する貴公団のご理解と一部で工事を行う国土交通省 京浜河川事務所のご協力により、今年5月に工事に入る予定区域に杭と旗を立てる営巣妨害工作を行っていただきました。これにより、コアジサシの営巣(抱卵)を工事区域外に誘導することに成功しました。貴公団のご理解に大変感謝しております。
今後の保護活動に役立つデータを得るためと、さらに繁殖の成功率を高めるために、下記の事項を実施させて頂きたいと思いますので、ご高配のほどよろしくお願い致します。


1. 巣、卵、ヒナの数を把握するために当該地に入って調査をすること。

2. カラスなどによる捕食から身を守るためにヒナが隠れられる木材、コンクリートブロックなどを置くこと。

なお、隠れ場所の材料の調達・設置作業は本会が行い、夏季の繁殖の終了後9月上旬までには設置した材料を本会が責任を持って撤去致します。
また、調査と設置作業は6月14日に行うこととし、雨天などで延期した場合のため6月21日を予備日とすることを希望します。
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・以下経緯についてメモを掲載する。

◎ 2003年3月25日(以下月日を3/25等と記載):
 当地(*)がコアジサシの繁殖地になる可能性大であり、何らかの対応を行う必要があるのではないかとの連絡が多摩川河口野鳥クラブから日本野鳥の会神奈川支部田村へ連絡あり。
(*; 大師河原多摩川沿いの都市基盤整備公団管理地 約150m四方の砂利地)
◎ 4/14:都市基盤整備公団へ神奈川支部(田村)から連絡。工事予定の説明を受ける。国土交通省京浜河川事務所が堤防関連工事を予定しているとの情報を得る。
 営巣期間内に工事が始まる予定があって工事を延期できない場合は「営巣妨害」の事前措置も必要と言うのが神奈川支部の考え。
◎ 4/19:当地付近に今年最初のコアジサシ飛来が確認される
(多摩川河口野鳥クラブ員の観察)。
◎ 5/ 7:当地に10羽のコアジサシが降り立っているのを観察。繁殖行動はほぼ確実と見られる。この他、当地は春の渡りのシギ・チドリ類の休息場所になっている。
◎ 5/14:繁殖行動が確実になったことで、神奈川支部から都市基盤整備公団へ連絡し、国土交通省との交渉に入ることとする。
◎ 5/15:国土交通省 京浜河川事務所 田園調布出張所 と打ち合わせを行う
(神奈川支部 田村)。
 国土交通省の工事予定範囲に「営巣妨害処置」を依頼。
◎ 5/19~20:国土交通省により営巣妨害用の杭・旗が設置される。
 これにより、結果的に営巣は工事区域外に誘導できた。すなわち、6月上旬に工事は行われたが「営巣妨害処置」を行った範囲であり、巣や雛が被害に遭った形跡は無い。
◎ 5/18:コアジサシ(成鳥)は50羽程度飛来。営巣(抱卵)に入ったものも観察される。当地ではすでにコチドリとシロチドリが営巣し雛が観察されている。
◎ 5/31:台風の大雨に日に観察 巣・卵の水没は少数と推定される(地上240羽)。
◎ 6/ 9:都市基盤整備公団(土地有効利用事業本部 神奈川支部)に対し、調査のための立ち入りと「シェルター」設置の要望書を提出・説明(神奈川支部 田村)。
 「シェルター」はコアジサシの雛が隠れられる場所であり、木材(長さ50cm程度の角材)にコンクリート板(40cm四方)を乗せたものなどである。
◎ 6/11:都市基盤整備公団から調査とシェルター設置について許可の回答あり。
◎ 6/14AM:巣・卵・雛の数の調査を実施(多摩川河口野鳥クラブの協力による)。
 調査結果: コアジサシの卵:376個(巣の数:162)
       コアジサシの雛:9羽
◎ 6/14PM:「シェルター」約70個を設置(多摩川河口野鳥クラブの協力による)。
◎ 6/21:雛が20羽確認される。この時期、雛約50羽が見られたという人の報告もある。成鳥(親鳥)は一度に200~300羽飛び立つのが見られる。
 6/14の卵の数などから推定して200番(400羽)、産卵数は500個を越えると考えられる。シェルターの利用も多数ではないが観察される。(~6/30)
◎ 7/5:成鳥(親鳥)200羽、飛べる程度に成長した雛6羽確認。
◎ 7/12:成鳥(親鳥)は200羽近く居るが、飛べる雛・小さい雛それぞれ10羽程度で少ない。抱卵姿勢の親鳥も20羽程度と少ない。
 コチドリ、シロチドリの雛も数羽見られる。
◎ 7/20~7/29:成鳥は20羽程度に減少。抱卵姿勢の親鳥も10羽程度、飛べる雛・小さい雛それぞれ5羽程度と少ない。
 7月中旬に急激に減少してしまった原因について、猫の侵入なども推定されたが、多摩川河口野鳥クラブメンバーの連日の観察でも不明である。
 この時期から、秋の渡りのシギ・チドリ類が休み場所として飛来する。7/29(白田氏観察)メダイチドリ:255,トウネン:45,ハマシギ2,ムナグロ1他。7/27には他にキョウジョシギ2,ソリハシシギ1なども観察される。
◎ 7/28:首都高速道路公団が東側一部で工事をするという計画(7/3に最初の連絡あり)について、お盆明け(8/15)以降であればコアジサシの繁殖に影響ないだろうと判断し、首都高速道路公団に対し、工事延期の要請はしないことを連絡。
◎ 8/10:飛べる雛(若鳥)を含めて、地上と飛ぶコアジサシの総数は10羽程度。抱卵姿勢の成鳥が1羽いる。
 シロチドリの雛2羽確認。
 秋の渡りのシギ・チドリ類多い。いずれも概数で、メダイチドリ:200,トウネン:20,シロチドリ10,キアシシギ2,ハマシギ1.
◎ 8/13~8/14:若鳥5羽、親鳥の下の雛1羽。成鳥も5羽程度で、繁殖はほぼ終わったと考えられる。
◎ 8/24:コアジサシは全く見られず。繁殖は終了した。

繁殖結果のまとめ:
・ 6/14の卵の数などから推定して200番(400羽)、産卵数は500個を越えると考えられる。
・ しかし6月下旬に最大50羽の雛見られたという情報はあるが、雛の数は20羽程度で推移し、一度に見られた若鳥(飛べる程度の雛)は10羽程度という少なさである。
・ 産卵数から考えれば、7月上旬に多数の雛・若鳥が見られると考えられるが、7月中旬に親鳥を含めて急激に減少してしまった。
・ 外敵などの侵入が考えられるが、原因は不明のままである。
なお、チョウゲンボウはしばしば現れたが、観察された限りではコアジサシ群に追い返され、捕食されたことは無い。
また、カラスが昼間襲撃・捕食しているのを観察されたことはほとんど無い。
・ 2003年夏の間のこの場所でのコアジサシの巣立ち数は少なく見積もると20羽、多く見積もっても50羽を越えないと考えられる。
推定産卵数(500~600)の5%からせいぜい10%である。
・ 繁殖成功率を小さくしている原因として、夜間に捕食性の外敵(サギ類)が来た可能性が考えられるが、不明である。



資料:捕食よけのブロックとコアジサシの雛


●サギのコロニー関係
・南足柄市
南足柄市のコロニーについては、地域住民と市との会合に野鳥の会西湘グループも参加して、死体や魚の吐き戻しの清掃などの提案も行った。しかし、樹木の伐採や追い払いにあって、サギコロニーは分散した。同じ地区を移動しながら繁殖を続けたようである。

・横須賀市浦賀
アオサギや、コサギなどが繁殖し横須賀市が対策協議会を作成したようである。

●鳥獣保護区関係
・鳥獣保護区の更新に関して意見の提出を求められたので、賛成の意見書を提出した。

●カワウ問題
・2003年3月16日 「神奈川カワウフォーラム」開催
BINOS10号p141に詳細を記載。
・2003年7月25日に水産課による神奈川県カワウ被害防除対策協議会が開催された。
協議会のメンバーは、水産課・(財)神奈川県内水面漁業振興会、芦ノ湖漁業協同組合、(財)日本野鳥の会自然保護室、日本野鳥の会神奈川支部、神奈川野生動物サポートネットワーク、生命の星地球博物館、相模原市、厚木市、水産総合研究所内水面試験場、河港課、緑政課がメンバーである。
協議会のメンバー選定について以下の要望を行ったが、市民団体の参加は見送られた。

資料:水産課宛の要望書
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                                2003年3月24日
神奈川県環境農政部水産課長様

日本野鳥の会神奈川支部
   支部長   鈴木茂也

カワウ関係の「協議会」委員の依嘱について(要望)

拝啓  ますますご清栄のこととお慶びび申し上げます。
さて、現在、緑政課が事務局で行っている、「カワウ被害対策に係る打ち合わせ会」が2003年度から水産課で「協議会」の形で、開催されるとお聞きしました。現在は、(財)日本野鳥の会自然保護室、日本野鳥の会神奈川支部、神奈川県内水面漁業協同組合連合会、緑政課、水産課、内水面総合研究所が出席者です。福島県・栃木県・東京都の協議会では、河川管理者、鳥類・魚類の研究者が参加しています。カワウ問題は、上記「打ち合わせ会」では、河川環境の問題点が今後の論点とて上げられています。東京都の協議会では、河川管理者(国土交通省)の素早い対応で、カワウ問題の研究や対応が行われています。また鳥類・魚類の習性を専門的な見地から意見を述べる専門家の参加も、今後の対策には重要です。さらに、川の利用は様々な市民参加が行われています。カワウ問題は川の環境を考え行動している市民団体の参加が不可欠です。
                               

1.カワウの「協議会」に、河川管理者・鳥類魚類の研究者・河川関係の市民団体の委員を依嘱するようにお願いします。

                                   以上
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●県委員の依嘱
神奈川県から依嘱があった委員会に以下の委員を決めた。
・鳥獣総合対策協議会委員 浜口哲一(支部顧問)
・鳥獣、移入鳥獣等対策専門部会委員 森要(支部幹事)

●鳥獣保護事業計画について
神奈川県から2件の意見を求められたので、メスジカの捕獲については反対、雄ジカの捕獲
については賛成の意見を提出した。

資料:神奈川県に提出した意見
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2003年7月31日
神奈川県知事 松沢成文殿

住所 神奈川区東神奈川1-1-14
氏名 鈴木茂也

ニホンジカの雌に係る捕獲禁止の一部解除についての意見

平成15年7月18日付けの緑政115-10号で依頼のあった標記のことについて、賛否及び意見は次の通りです。

1.賛否
反対

2.意見の要旨又は理由
神奈川県ニホンジカ保護管理計画は、個体数調整が優先し生息地管理の具体的な方向性が欠けています。今回の保護区での、雌の捕獲を認める事はニホンジカ保護管理が、安易な個体数調整を認める事により反対します。生息地管理の研究と具体的な方向性が、先行する事が重要です。高標高域における個体数調整も、中標高への個体の誘導が優先事項と考えます。
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2003年7月31日
神奈川県知事 松沢成文殿

住所 神奈川区東神奈川1-1-14
氏名 鈴木茂也

ニホンジカの雄の捕獲等についての意見

平成15年7月18日付けの緑政114-6号で依頼のあった標記のことについて、賛否及び意見は次の通りです。

1.賛否
賛成

2.意見の要旨又は理由
シカ保護管理のうえで、猟区は重要な位置をしめると考えます。シカの保護管理の調査結果から、同地区においてシカ個体数が減少し保護管理上、猟区の機能がはたせない状況を踏まえて賛成します。

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