1995年の保護研究部の活動



1.大磯町照ヶ崎のアオバト集団飛来地の天然記念物指定
2.藤沢市遠藤のオオタカ繁殖地の保護
3.その他のオオタカの保護問題
4.鳥獣保護区関係の意見書提出
5.相模川のコアジサシについて
6.自然環境保全地域の候補地の推薦
7.真鶴半島での農薬散布について
8.サルの追い上げ活動への参加
9.環境アセスメントについて
10.傷病鳥獣の保護対策について
11.調査活動

ここには,1995年に支部の保護研究部が中心になって取り組んだ活動をまとめる.
支部の目的の一つである,県内における鳥類の重要な生息地の保護活動について,今年度の大きな成果としては,照ヶ崎のアオバト飛来地の天然記念物指定があげられるが,これは足かけ7年の歳月をかけて地道に進めてきた運動の成果であった.


●大磯町照ヶ崎のアオバト集団飛来地の天然記念物指定

大磯町照ヶ崎海岸の岩礁には,春から秋にかけてアオバトが海水を飲むために集団で飛来し,野鳥の会の重要な観察場所にもなっている.
ここは相模湾の長い海岸線の中で,アオバトの繁殖地である丹沢山地に近い唯一の岩礁であるために,その生活にとって重要性が非常に高いと考えられる.
ところが,現地は大磯漁港に隣接した場所に位置するために,港の拡張,ヨットハーバーの新設などの計画が立てられたことがある.
その計画は,立ち消えにはなっているが,もし再燃することがあれば,岩礁の将来が危ぶまれる状況である.
そこで,神奈川支部では,岩礁を県の天然記念物に指定してもらうことによって万全な保護対策をとることを考え,1990年から交渉を進めてきた.
その結果,1996年2月13日にようやく,指定をみることができた.
ここには,その間の交渉の経過をまとめておく.交渉の過程は,下記の図のように進んでいった.
指定が成功した要因としては,担当課や委員会委員と綿密に打ち合わせてその意向を尊重して進めたこと,オリジナルな現地調査を行って基礎資料となる報告書を刊行したこと,地元の大磯町のコンセンサスをとることができたことの3点をあげることができる.
以下に,時間を追って経過を紹介していく.

「文化財保護課打ち合わせ11990.6」→「現地調査 1991~」 →「報告書の刊行1992.4」→ 文化財保護課との交渉 1991~
→文化財保護員会での協議1994~96→指定1996.2.13
(大磯町のコンセンサス形成)

① 保護問題の発生/1988年に大磯町民有志が「大磯港ヨットハーバー計画に反対する意見書」を発表し,
  県の推進している湘南なぎさプランの一環として大磯港にヨットハーバーを作る計画があり,岩礁には展望
  施設を作る計画があることを指摘して警告を発した.
  これによって,「こまたん」(神奈川支部の定例探鳥会の一つである高麗山・花水川探鳥会)のメンバーの
  中に危機感が生まれ,保護のための動きを始めた.

② 担当者との下打合せ/1990年の6月に,支部役員が県教育委員会の文化財保護課を訪問し,照ヶ崎の
  アオバト飛来地を天然記念物に指定することが可能か,またそのためにはどんな準備を進めていったらよいかの
  相談を行った.
  担当者からは,現地調査を行って天然記念物にふさわしい価値があることを客観的に示せる資料を用意する
  こと,地元の大磯町の役場や議会の合意を形成し町から発議するようにもっていくことの2件のアドバイスを受
  けた.

③ 現地調査/上記のアドバイスをふまえて,現地調査が計画された.
  こまたんの有志が調査を担当することになり,「アオバト探検隊」が結成され,1991年4月から定期的な現地
  調査にあたった.
  調査には,全部で57名が参加し,その年の11月まで,綿密な調査が実施された.
  この調査は,小中学生も含めた家族の参加者が多かったのも特徴であった.
  また,丹沢からの飛行経路についても探索が行われた.なお,アオバト探検隊による調査は,様々な発展を
  しながら現在も継続している.

④ 報告書の刊行/1991年の1年間の現地調査の結果をまとめ,「大磯町照ヶ崎海岸におけるアオバトの生態」
  というタイトルの,B5版95ページの報告書を1992年4月に刊行した.
  この報告書によって,照ヶ崎が5月から10月までのアオバトの安定した飛来地であること,1日ののべ飛来数が
  2000羽を越す日があり,また最大同時飛来数も232羽を数え,非常に多くの個体が飛来していること,確かに
  丹沢山地から飛来していることなどを示すことができた.
  報告書にまとめたことは,それ以降の交渉の大きな武器となり,また,石井宣和大磯町長から序文を頂いたこ
  とも,大磯町での合意形成に大きな力になった.なお,刊行には(財)日本野鳥の会の支部活動助成金の補
  助を頂いた.

⑤ 大磯町での合意の形成/地元の大磯町には,港の拡張,ヨットハーバーの新設などへの思惑を持った有力者
  がおり,合意形成の困難が予測された.
  幸い,1990年に環境行政を政策の中心に掲げた石井宣和町長が当選し,アオバトの保護についても理解を
  得ることができた.
  1991年には神奈川県環境部の選定する「かながわの探鳥地50選」に照ヶ崎が選ばれたが,それに先立つ
  県民投票で,大磯町からは多くの票が照ヶ崎に集まった.このことは町当局に町民の関心の高さを示すよい
  機会になった.

⑥ 文化財保護課と文化財審議会との協議/以上のような準備が整った段階で,1992年9月に,再び文化財保護
  課を訪問した.
  その後,何回か事務的なやりとりをした後で,文化財審議会に諮られる段階にこぎつけた.
  審議会では,横浜国立大学名誉教授の斎藤實先生が担当となり,それ以降は斎藤先生の疑問に答える形で,
  指定準備が進められていった.
  斎藤先生から提示された疑問は,照ヶ崎の渡来地がどのくらいの歴史があり今後も安定している保証があるか,
  全国的にみた時にどのくらいの価値があり,また他の飛来地の文化財指定の前例はあるか,海水を飲む生理
  的な説明ができるのか,といった点であった.
  第一点については,清棲幸保著の「日本鳥類大図鑑」に,「1937年8月15日に海水を盛んに飲むのを観察した」
  という記述があり,伝統的な飛来地であることの根拠にあげることができた.
  第二点については,報告書に収録しておいた野鳥の会の各支部のアンケートによる全国の状況がよい説明資料
  になった.
  第三点については,学問的な解明は今後の課題としても,そのためにも飛来地の保護が重要なのではないか
  とお話して納得して頂いた.
  斎藤先生の意向で,(財)日本野鳥の会の黒田会長,塚本専務理事にもヒヤリングに協力して頂いた.
  斎藤先生には,約2年間の時間をかけて,最終的な納得をして頂いたが,資料としてお渡しした,アオバトの
  報告書はぼろぼろになるまで読み込まれており,先生の真摯な取り組みには最大の敬意を表したい.
  下記に資料として掲げる指定理由書は,斎藤先生のまとめられたものである.なお,最終段階で,斎藤先生
  から,現地を立ち入り禁止にすべきではないかという提案があったのだが,現状でも磯遊びなどの人の存在は
  アオバトの飛来にほとんど障害になっていないことから,目に余る行為だけに注意していくようなソフトな対応を
  していく形にして頂いた.
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資料1.天然記念物指定理由書

名称  「大磯町照ヶ崎のアオバト集団飛来地」
所在地 中郡大磯町大磯字南下町 1398-2 地先岩礁
指定年月日 平成8年2月13日

 理由 中郡大磯町の照ヶ崎は,相模湾奥に伸びる海岸線のほぼ中央に位置し,大磯港の西南に隣接,点在する岩礁群である.
 背後には大磯丘陵が接近し,海岸近くまで豊かな樹叢が保たれている.
 この岩礁は,満潮時でも水没せず,潮だまりには新鮮な海水が補給されるため,アオバトの海水吸飲にとって好適な条件を備えている.
 アオバトは,ハト科アオバト亜科に属する全長約33cmの中型のハトである.体は淡緑色で,雄は翼の小雨覆が赤ワイン色を示す.
 おもに山地の広葉樹林に生息し,冬季には暖地に移動するものが多い.アオバトが海水を吸飲するという興味深い習性を持つことは古くから知られているがその生態や生理的な意義については十分解明されていない.
 しかし,全国の数箇所にそうした飛来地があり,多数のアオバトの吸飲行動が観察されることは,海水を吸飲できる海岸の存在がアオバトの生活に欠かせないものであることを示していると思われる.
  大磯照ヶ崎に飛来するアオバトの群れは,初夏から秋にかけて多いときには200羽を越え,一日の延べ飛来数も2,000羽を越えることがある.
 このように多数のアオバトが飛来する地点は全国でも稀で,貴重なものである.
 またこれらの中には丹沢山地から飛来するものが多く,この山地に生息するアオバトにとっても当飛来地は重要な意味を持っている.
 以上の理由から当飛来地を保護することは,アオバトの生息環境保全の一環として、また不明の点が多い本種の習性解明のためにも重要である.

資料2.天然記念物指定を報じる新聞記事(1996年2月8日付け毎日新聞)


●藤沢市遠藤のオオタカ繁殖地の保護

 藤沢市遠藤の笹窪谷戸は藤沢市内に残された貴重な自然だが,現地は,藤沢市による「健康と文化の森」の予定地になっており,その工事に先立って谷戸の湿地が残土捨て場として利用されていた.
 藤沢探鳥クラブ,大庭自然探偵団などの数団体が,谷戸の自然全体の保全を藤沢市に働きかけている.
 神奈川支部でもこれに賛同して,1994年12月15日に要望書を提出し,さらに1995年2月9日には,支部長が西野康雄藤沢市計画建築部長に面談し,保全の要望を伝えた.
 しかし,部長からは,開発を希望する地元の意向を最優先するという考え方が何度も繰り返されるばかりで,話はまったく平行線であった.
 その後,1995年に同地でオオタカの繁殖が確認されたので,改めて下記の要望書を藤沢市に提出した.
 藤沢市は現在のところ当初の計画を変更してはいない.ただし,残土の処理については,土地の使用について手続き的な問題があることが分かり,現在は中断されている.
 オオタカについては,1995年の繁殖期には,藤沢探鳥クラブを中心として,密猟や悪質な撮影者に対するパトロールが実施され,本会会員の有志も参加した.

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資料3.藤沢市へ提出した要望書

  平成7年4月26日
 藤沢市長 葉山 峻殿 日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

藤沢市遠藤におけるオオタカの生息地保護について(要望)
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.
 さて,標記の市内遠藤のオオタカの生息地保護については,すでに平成6年12月15日づけの要望書で,善処をお願いし,さらに平成7年2月9日には西野康雄計画建築部長に面談し,口頭でも要望を申し述べております.
 その後,本年に入ってからの現地調査によって,笹窪谷戸で,オオタカが営巣し,繁殖活動に入っていることが確認されました.ご存知の通り,オオタカは「種の保存法」において国内稀少種に指定されておりその生息地の保全に配慮すべきことが示されています.
各地のオオタカ生息地においても,開発計画の見直しや変更によって,その保全をはかる動きが見られ,そうした対応が,法の精神に沿った自治体の取るべき責務と思われます.
 こうした状況をふまえて,貴市におかれてもオオタカの生息環境の保全とその保護について,下記のような対策をとって頂きたく改めてお願いいたします.
 環境行政に前向きに取り組んでこられた貴市の,本件に対する対応に注目しております.
 遠藤のオオタカが無事に巣立つよう,積極的な保護策をお願いいたします.

1.藤沢市遠藤笹窪谷戸のオオタカについて年間を通した生息状況調査を実施して下さい.

2.笹窪谷戸について,残土による埋立を含めて現状を変える工事や開発計画を凍結し,調査結果に基づいて
 利用計画の再検討をしてください.

3.笹窪谷戸が将来的にもオオタカの生息地としての環境を保つように,その利用計画にあたっては,自然環境を
 いかした自然教育園などの施設を考えてください.

4.市民ボランティアを育成して,情報の収集,密猟の監視などの活動を組織して下さい.

                                            以上

●その他のオオタカの保護問題

 平塚市土屋,厚木市荻野などのオオタカの営巣地については,継続的に状況を把握し,必要な対応をしている.厚木市については,市環境保全課から1995年には市民団体に観察業務を委託したいという意向が伝えられたので,県央ふれあい探鳥会のメンバーで「荻野のオオタカと自然を守る会」を作り,調査を行った.幸い,1995年には繁殖が確認された.なお,既に述べたように藤沢市遠藤の営巣地についても要望書を提出した.また,野鳥の会栃木県支部の遠藤孝一氏から「日本オオタカネットワーク」の結成について,呼びかけがあり,神奈川県からは他の数名とともに,支部の代表として石井隆が参画することになった.
 なお,1995年には,県からの委託で「ワシタカ類特定鳥獣等保護調査」を行い,結果を報告した.なお,その内容については,保護上の理由から,少なくとも営巣地点が特定できる情報は非公開にするよう,県に要望しており,支部としても公開はしない考えである.

●鳥獣保護区関係の意見書提出
県環境部からの依頼によって,鳥獣保護区の更新および新設について,賛成の意見書を提出した.
今年度,提出したのは,6月に二子山および田浦大作保護区の更新,矢指および長屋門鳥獣保護区の新設,7月に道保川公園保護区の新設であった.
下記に意見の例を示しておく.

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資料4.鳥獣保護区の更新への意見の例

                                               平成7年6月15日
神奈川県知事 岡崎 洋 殿               日本野鳥の会神奈川支部  支部長 浜口 哲一

二子山鳥獣保護区の存続期間の更新に係る意見

平成7年5月26日付け自保第57号で通知のあった標記のことについての賛否および意見は次の通りです.

1.賛否 賛成     

2.意見および理由の要旨
 神奈川県内は近年急速に都市化が進み,鳥獣類の良好な生息地は加速度的に減少しています.
 一方で都市環境に生活する住民からは,自然とのふれあいを望む声が高まっており鳥獣類の多く生息する自然度の高い緑地を確保することは環境行政の重要な課題の一つです.
 そうした施策の一環として鳥獣保護区の意義は今後ますます大きくなっていくと考えられます.
 さて,二子山鳥獣保護区は,三浦半島の中でももっとも自然度の高い地域の一つに設定されている保護区で,その重要性は県東部随一といってよいものです.
 例えば留鳥のフクロウ,夏鳥のオオルリ・サンコウチョウ・ホトトギスが継続的に繁殖しており,そうした鳥の繁殖が見られる地域は極めて貴重であります.今後とも保護区としての適切な管理を望みます.
 なお,本保護区を横断する形で,三浦半島中央道路の建設が計画されています.
 この道路の建設は,保護区内で繁殖する鳥に大きな影響を与える恐れがあり,関係部局との協議を十分に行ってください.
                                                以上

●相模川のコアジサシについて
 コアジサシは,神奈川県内では相模川と酒匂川の中州の砂礫地に集団営巣しているが,河川敷の利用が進んだこと,自動車の乗り入れが増えていること,河川水の過剰利用によって水量が減り中州が草におおわれることなどがあいまって,営巣に適した場所が減り,その影響で個体数が急激に減少している.
 そうした状況から,「神奈川県レッドデータ生物報告書」(神奈川県立生命の星・地球博物館,1995)によれば,絶滅危惧種に位置づけられている.
相模川では,1995年には2カ所で営巣が確認されたが,車や人の立ち入りが多く,観察者や保護団体から保護の要望が出され,ロープを張って立ち入りを制限する対策がとられた.
 神奈川支部では,厚木市在住の北条文彦会員からの要請で,下記の要望書を県に提出し,1996年1月16日に,相模川総合整備事務所の田沢治水課長等と話合いの機会を持った.
 県からは,河川敷は自由利用が原則なので車の全面立入り禁止は難しい,1995年の営巣地2カ所については水路を掘って車が入れないようにしてみる,ロープによる規制については漁業協同組合の合意が必要なので,営巣が確認できた段階で自然保護課を通して対応するような体制にしたいというような話があった.
 1996年は,繁殖期の早い段階で状況を把握し,県と協議しながら対応していくようにしたい.
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資料5.県に提出した要望書

                                                1995年11月20日
神奈川県相模川総合整備事務所長殿
                                   日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一

相模川河川敷で繁殖するコアジサシの保護に関する要望
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.日頃より河川の環境保全についてのご配慮を頂き感謝しております.
 さて,相模川には多くの野鳥が生息していますが,特に注目すべき種類にコアジサシがあります.
 コアジサシは,相模川流域ではアユサシと呼ばれ,昔から川の風物詩として親しまれてきました.
 コアジサシは,もともと河原や海岸の砂礫地に集団で営巣する種類ですが,近年営巣に適した環境が減少するとともに,個体数が激減しており,環境庁のレッドデータブックにおいて希少種としてリストアップされています.
 相模川ではかっては,各地の中州や岸に営巣していたと考えられますが,しだいに営巣地がなくなり,現在では厚木市域の1,2ヶ所に営巣しているだけです.
 1995年度は,横須賀水道橋上流と,戸沢橋上流の2ヶ所で営巣が認められたにすぎませんでした.
 これらの営巣地は,植生が疎らな砂礫地でコアジサシの営巣に適した条件を持っていますが,車と人の立ち入りによって,繁殖の成功が困難な状況にあります.
 特に四輪駆動車の侵入は巣や卵を引き潰つぶす事故の原因となっています.
 今年度は,地元の有志と,県環境部によって車止めが作られ,一定の成果をあげたようですが,こうした事態は来年度以降も続くと思われ,河川管理者による継続的な対策が必要と考えます.
 下記の要望についてぜひご検討ください.なお,コアジサシの集団繁殖地ではイカルチドリ・コチドリなどのチドリ類も多く営巣することが知られており,コアジサシの保護は河川に生息する他の水鳥の保護にもつながります.
 本会としては看板の設置や繁殖期のパトロールなどについてボランティアとして協力の意志があることを申し添えます.

・河川敷内への車の侵入を特定のエリアを除いては原則として禁止してください.
・コアジサシの営巣場所の上下各200mの範囲に車が立ち寄れないような対策を講じてください.
・以上の点について担当者と面談の機会を与えてください.

                                           以上


●自然環境保全地域の候補地の推薦

 県環境部からの依頼で,自然環境保全地域に候補地として,オオタカの営巣地として,厚木市荻野・平塚市土屋・藤沢市遠藤・秦野市菩提,またクサフグの産卵地として横須賀市荒崎の合計5カ所を推薦した.
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資料6.自然環境保全地域候補地事前調査票

●団体の名称  日本野鳥の会神奈川支部
                              〒221 横浜市神奈川区東神奈川 1-1-4 tel.045-453-3301
1.地域の所在地 厚木市荻野
2.地域の名称  荻野
3.自然環境の概要 丘陵地の環境がよく残されている.尾根から斜面には雑木林とスギ林が広がり,谷筋には
  休耕田から遷移した湿地が見られる.
4.保全対象の名称 オオタカ(繁殖) その他希少な動植物が多い

          (中略)

9.周辺の開発計画
   厚木市荻野運動公園の拡張工事およびそれに伴う農地整備工事が行われる予定だったが,オオタカ繁殖の
   確認によって予定が凍結されている
 
         (以下略)


●真鶴半島での農薬散布について

真鶴半島の松くい虫防除のための薬剤散布については,1995年から抗議に意志を表明しているが,県の担当課から資料7のような回答があった.
県としては,森林研究所で薬剤散布の影響調査を行っているとのことであるが,その結果の公表を求めながら,さらに改善をもとめていきたい.
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資料7.県林務課からの回答

  平成8年1月29日
日本野鳥の会神奈川支部 保護研究部長 石井 隆様
                                       神奈川県農政部林務課 森林保全班

真鶴半島における松くい虫防除のための薬剤散布について
 平成8年1月12日付け標記の件につきまして,次のとおり回答いたします.
 真鶴半島の樹齢300年を越す貴重な松林を,松くい虫の被害から守るためには,現在のところ薬剤散布による予防が最も効果的な方法と考えております.
 散布に際しては,農業取締法に基づいて登録された薬剤を適正に使用しておりますが、県として独自に環境への影響調査も実施しております.
 これらの結果を踏まえ,今後も安全な松くい虫被害の防除に努めたいと考えております。
 なお,平成8年度におきましても5月中旬から6月中旬にかけて,当該地において薬剤散布を実施する予定です.
 散布中の薬剤の飛散や危被害防止等,安全対策には万全を尽くすよう指導してまいりますので,御理解と御協力をお願いいたします.


●サルの追い上げ活動への参加

 小田原を中心とした西湘地区では,サルに農作物の被害が問題になっている.
 これは,かって湯河原などで餌付けが行われたためにサルの人馴れが進み,森林伐採によって生息地が奪われたこともあいまって,サルが里に下りて引き起こしているものである.
 しかし,サルの個体数はわずかに220頭程度と考えられ,他地域と切り離されているために,容易に絶滅の危険もある.
 神奈川県では,駆除によらない被害防止対策として,「野猿の郷」整備事業を進めており,広葉樹を多く植樹してサルを山に戻そうとしている.
 それを応援する試みとして,民間の調査機関である野生動物保護管理事務所が中心になって,畑にいるサルを追い出し,人間のこわさも教えて山へ戻す活動が計画された.
 支部でもその趣旨に賛成し,1995年8~9月に行われたその活動に有志を募って参加した.
 参加者は石井部長以下,9名であった.


●環境アセスメントについて

 以前から,本会の刊行物が県の環境アセスメント条例による評価書に無断で引用されることがあり,本会の意図に反する使われ方をするケースもあった.
 そうした状況に対応するために,文献引用についてのルールを徹底するとともに,担当課への申し入れを行ってきた.
 一方で,アセスメント評価書の中で,不十分な調査しか行われていない場合もあり,そうした実状を把握するために,今年度は,今までの評価書を入手し,その内容を検討した.
 また,アセスメント条例の改定が検討されているという新聞報道があったので,その内容について問い合わせをしたところ,公表できないという回答だったので,情報公開条例を用いてアセスメント制度検討委員会の議事録を公開請求した.
 しかし,県の回答は全面非公開というものであった.
 アセスメントの制度そのものが,県政への県民参加を目ざしたものであるはずなのに,その改正について審議の過程が公開されないことは大きな矛盾といえるだろう.
 この件は,石井部長が,神奈川県公文書公開審査会に異議申立て中である.


●傷病鳥獣の保護対策について

野生傷病鳥獣の保護対策については,支部として体制の充実をしばしば県に申し入れてきた.
1995年には懸案の一つであった県自然保護センターへの獣医資格を持った現役職員の配置が実現した.
一方,2つの動物園で県から委託を受けている横浜市では,業務から撤収することが検討されているとの情報が入ってきたので,下記の要望書を提出した.
横浜市からはすぐに回答があり,継続の意向であることが示された.
今後も引き続き動向に注目していきたい.
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資料8.横浜市へ提出した要望書

平成8年4月1日
横浜市長 高秀 秀信殿  
          日本野鳥の会神奈川支部  支部長 浜口哲一

野生傷病鳥獣救護に関する要望
 日頃から,自然保護行政の推進に努力くださり,ありがとうございます.
 当会は,野鳥に親しむことを通じて,自然環境保全に貢献することを目的に活動を続けておりますが,貴市の動物園で行われている野生傷病鳥獣救護活動について要望があり、書面にてお願いいたします.
 貴市では,都築動物園の開園に伴い,野毛山,金沢両動物園での傷病鳥獣救護体制を廃止する意向であるとの情報を得ました.
 現在,神奈川県内での専門の救護施設は,両動物園と県立自然保護センターにあるのみで,その中の二つの施設が救護業務を廃止することは重大な影響があると思われます.
 当会では,野生傷病鳥獣救護活動には,一般的な野生動物愛護の意味の他に,二つの重大な役割があると考えております.
 一つは,傷病事故の多くが,釣り糸,交通事故など人間活動の影響を受けて発生しており,それを救護することは人間として果たさねばならない責任であるということです.
 また,生命が救えなかった場合にも,その検死データが集積されることによって,事故の原因をとりのぞく対応が可能になってくる場合があると思われます.
 動物が道路を横断する際の事故事例を集めることにより,動物の移動できる道路作りを試みることは,その1例です.
 また,こうした意義のある傷病鳥獣救護活動を推進するためには,三つの要素が必要であると考えております.
 それは充実した拠点施設,そのネットワーク,市民ボランティアによる協力体制です.
 拠点施設としては,専門の獣医師が配属され,医療設備も整った動物園が,現状ではもっともふさわしい施設と考えます.
 動物園の日常的な業務との整合が困難であるという実情は理解できないわけではありませんが,むしろ野生動物の救護を通じての貢献を考えることが,将来にわたる動物園の社会的な存立意義につながってくることと確信しております.
 また,そうした拠点施設が,県内で1ヶ所しかないよりも,各地域にあった方がきめ細かい対応が可能なことはいうまでもありません.
 拠点施設を減らすことよりも,むしろ増やすことを考えて頂きたいと切望しております.
 現在でも,傷病鳥獣の搬送などで,多くの県民がボランティアで協力しており,当会の会員も積極的に活動に加わってきました.
 その結果,コアホウドリ,カモシカなど貴重な種類が救護され,野生に復帰できた事例があります.
 今後は,そうしたボランティアを積極的に養成して,救護活動を充実させていくべきと考えます.
 以上のような考え方に基づいて,次の点を要望いたします.

1.野毛山,金沢両動物園での野生傷病鳥獣救護体制の継続をお願いします.
2.新設される都築動物園においても同様の業務を行ってください.
3.市民ボランティアを育成して,救護体制の充実をはかってください.
4.政令指定都市横浜市独自の野生傷病鳥獣救護事業を業務として位置づけてください.

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資料9.横浜市からの回答

平成8年4月30日
日本野鳥の会神奈川支部 支部長 浜口哲一様
                                        横浜市緑政局

野生傷病鳥獣保護事業について
日頃から横浜市の動物園行政及び野生傷病鳥獣保護事業にご協力頂き,厚くお礼を申し上げます. 
 野生傷病鳥獣保護事業につきましては,昭和46年に鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づき,神奈川県から野毛山動物園が「野生傷病鳥獣保護センター」に指定され,野生傷病鳥獣保護事業の委託を受けています.
 今日まで金沢動物園(昭和57年開園)も含め,20有余年の間,市民はじめ県民の方々から傷ついたものや衰弱した野生動物が持ち込まれ,動物愛護精神の普及と野生への復帰の救護活動を行っています.
 貴日本野鳥の会の協力を賜りまして,相当な効果を上げているところでございます.
 さて,ご要望の件につきましては,次のとおりお答えいたします.

1.野毛山動物園及び金沢動物園における野生傷病鳥獣保護事業については,現在廃止する予定はありません.
2.平成10年春に開園の新動物園においても,同様の業務を行いたいと考えております.
3.保護センターの指定を受けてから事業の円滑化を図るためにも,動物園では動物病院に飼育職員や獣医
 職員を配置しているところであります.
4.本事業は基本的には,法律に基づき都道府県の業務とされておりますので,従来どおり県市強調事業として推進し
 てまいります.

連絡先 緑政局総務部動物園等担当 紺野


●調査活動

・ガンカモ調査/1981年から継続して実施してきた調査として,1月15日のカモ類の一斉調査を,今年度も実施した.
 田村俊幸がとりまとめを担当し,54カ所で個体数カウントが行われた.

・モニタリング調査/本部の呼びかけによるモニタリング調査の2年度目として,干潟と川の調査に参加した.
 多摩川河口・相模川河口・江奈湾・平潟湾の4カ所を調査地とし,現地調査では,川崎市青少年科学館・
 相模川河口の自然を守る会・金沢探鳥クラブの協力を得た.
 また,参考調査地として,県央部を中心とした休耕田と河川について,支部独自の調査を行った.

・丹沢大山自然環境総合調査への協力/1993年から進められている総合調査には,鳥類班として支部の
 有志が参加しているが,1995年は新たに計画された利用者動態調査に協力することになり,はばたきの呼び
 かけによる会員と,県央ふれあい探鳥会の有志がボランティアとして春と秋の2回大山で登山者のカウントなど
 を行った.

・鳥類目録の編集/1997年に予定している「神奈川県鳥類目録第3集」の準備作業として,隔月に編集委員会を
 開催し,提出された観察記録カードの整理などを行った.
 この会合には,常時20名程度の参加者があり,協力者へのニュースレターの発行なども行っている.
                            以上