BINOS vol.10(2003)


BINOS vol.10:1-17(2003)

丹沢山地堂平におけるアオバトの繁殖調査
こまたん


【要 約】


丹沢山地より大磯照ヶ崎海岸に飛来するアオバトの繁殖活動を丹沢山地,堂平周辺の標高900m~1300m付近で2002年4月4日から6月29日までアオバト繁殖確認の調査を行なった結果,下記のことが明らかになった.


1.20羽以上の群れがよく観察されたのは4/20~5/11までで,その後は大きな群れは皆無で
 あった.
 群が木に止まっている時はほとんど眠っているように目を閉じジッとしている,たまに目を
開けては新芽等をついばむ動作を繰り返し落ち着いた様子で,動作は緩慢.


2.群れが分散した後は夜明けから8:30までが鳴き声や姿の観察が頻繁でありその後は
  鳴き声や 姿の観察が稀になる,群れが分散した後その頃より大磯町照ヶ崎海岸に飛来
 するアオバトの数が増えてくる.


3.「オーアオーアオーアーオアオー」の基調に高い声と,低い声の2種類がある.


4.渡り直後のアオバトはサワグルミの雄花序をよく食べている.


5.「ポポポポッ」又は「コココココココッー」,「クククク」という鳴き声は求愛行動と共 に鳴いていることを確認した.


6.求愛行動と思われる以下の行動を確認した.


 ①尾羽を振りながら「ポポポポッ」という声で鳴くと離れていた♂が♀のすぐ横に移動して首を左右に振るなど,♂♀が接近したときに「ポポポポッ」等という声をよく聞いた.


 ②枯木の高木に止まったアオバトの性別は圧倒的に♂が多く,ペアーに他の♂がやってくるとペアーの♂が威嚇し追い返したり,数羽の♂がいる場合は強いものが他の♂を威嚇し, 追い払い枯木の頂点に立って尾羽を振る.


 ③枯木の頂上で♂♀とも尾羽を激しく振り体を小刻みに震わせる,♂は胸を膨らませ尾羽を大きく振る.


 ④♀の後に♂が来て下の枝から羽をフワッーと大きく広げ(2回),♀の横に止まり盛んに尾羽を上下させる.


 ⑤♂はニワトリのように首を伸び縮みさせたり尾羽を上下に振る,その角度は水平方向から 垂直方向まで移動角度70~90度近くを1秒間に2回ほどのペースで尾羽を激しく振る,♀も尾を振るが振幅は小さい.


7.森の中でよく目立つ枯木の高木はアオバトのペアー形成,求愛行動の重要な場所である.


8.営巣木は高さ約18m,幹の太さは直径28cmのイヌシデの木でサルナシの蔓が絡んでいた.
 巣は地上約12mの位置で二股に分かれた部分にサルナシの蔓が絡んでいて,そこに小枝 を積み重ねた底の浅いもので小枝は同じようなサイズの細い枝が使われていた.
 巣の外形サイズは想定で直径25cm程度と思われる.


9.♂,♀の在巣は♂は昼,♀は夜間で分担して抱卵,抱雛すると思われる.
 ただし逆に♀が昼中交代せずに抱卵し続けていることもある.抱卵期,育雛中期までは 親鳥は巣を空けることは無かったが育雛後期には巣を空けることもあった.


10.抱卵の♂♀交代までの所要時間は3~4秒から2分間,交代時の出入りはいつも同じ方向から行っている.
  抱卵中親鳥は15度程度づつ座る位置を変えている,♂は平均約48.3分に1回,♀は平均30分に1回の移動を行なった,卵・巣に対する意識は♀の方がきめこまかい.


11.雛は2羽を確認,産卵日から約15日間で孵化,孵化日から巣立ち日までは約15日間であったと思われる.


12.給餌は雛交互に与えたり,2羽の雛へ同時に行っていた.親の少し開けた嘴に2羽の雛は両側から嘴を突っ込み,まるで親の口元に緑色のコブが出来たように見えた.
 給餌は,雛が頭を伸ばし親鳥に餌を催促するしぐさや雛が親の胸をつつき催促することで開 始 さ れた.
  育雛後期の給餌は雛が給餌を開始する時小さな声でクウークウーと声がした後,親の口に嘴を突っ込んでいた.
  前期との給餌の違いは,頻繁には給餌を行なわないが1回の給餌時間が長くなったことだった.


13.巣立ち前に雛が巣離れ(15cm程度)の行動をした.巣離れを2回行い離れた時間は9分間と30分間で,また巣に戻った.その後少なくとも3日以内に巣立ちは完了した.



BINOS vol.10:19-32(2003)
神奈川県藤沢市川名清水谷戸の鳥類群集(9年前との比較)
石川祐一


【要 約】


神奈川県藤沢市南東部の島状緑地,川名緑地には昔ながらの谷戸景観が残された清水谷戸が存在する.
9年前に当地の鳥類群集を調査した沼里(1994)の報告をもとに,9年前と現在とで鳥類群集がどう変化したかを明らかにすることを試みた.
調査はラインセンサス法を用い,2001年11月から2002年 10月まで行った.
出現した種は25科48種であり,出現月数と出現率とからこの地の主要種は,留鳥のトビ,コジュケイ,キジバト,カワセミ,アオゲラ,コゲラ,ハクセキレイ,ヒヨドリ,モズ,ウグイス,エナガ,シジュウカラ,メジロ,ホオジロ,カワラヒワ,スズメ,ムクドリ,ハシボソガラス,ハシブトガラス,夏鳥のツバメ,冬鳥のノスリ,シロハラ,ツグミ,アオジ,シメの合計25種であった.
9年前の主要種は47種中19種であり,主要種が増加したことがわかった.
出現種数は,春の渡りと秋の渡りの時期に多く,越冬期は比較的多い状態で安定し,繁殖期になると種数は減少し,5月から9月まで右下がりに減少する結果となった.
水辺の鳥はかつて9年前に観察されたが今回観察されなかった種に多く含まれた.
これは9年前に存在した谷戸入り口付近の水田が宅地や畑地になったことが影響していると考えられる.



BINOS vol.10:33-43(2003)
定位記録法を用いた鳥類調査の試み-横浜市都筑区の都市緑地の場合-
秋山幸也


【要 約】


鳥類の基礎的な調査方法として普及したラインセンサス法に対し,調査地の状況や調査目的により見合った方法を検討するため,都筑区の都市緑地においてラインセンサス法と定位記録法を用いて調査を実施し,比較検討した.


1.2か所の都市緑地において,30分間の定位記録法を緑地内部と周縁部に分けて実施したところ,いずれの緑地においても出現種数は同じ緑地を対象としたラインセンサス法を上回った.


2.緑地の鳥類相は,里や都市公園などで一般的なものであり,緑地内部よりも周縁部で種数,記録件数とも多かった.


3.行動観察の記録には,定位記録法とラインセンサス法で大きな差は見られなかったものの,緑地周縁部では,環境利用を把握する上でより有効な記録が若干多く得られた.
 出現位置も,周縁部の定位記録では多層にわたって出現記録が得られることがわかった.


4.これらの点から,面積の小さい都市緑地のように周辺環境の影響が大きい調査地では,定位記録法によって周縁と内部を分け,それぞれ詳細に行動観察を行える定位記録法が有効であることがわかった.



BINOS vol.10:45-60(2003)
カラスの集団ねぐらへの飛翔高度について
畠山義彦


【要 約】


1.小田原市小竹上空を大磯町虫窪のねぐらに向けて飛翔するカラスの飛翔高度を, 2002年11月から2003年2月にかけて調査した.


2.ねぐらへ向かうカラスの飛翔高度は視界と相関関係があることが確認された.
 すなわち, 天気がよく視界が良い日には, 飛翔高度は高く, 逆に天気が悪く視界が悪い日には飛翔高度は低い.このことは, ねぐらへ向かうカラスの航法は, 地上の目印を目指した地文航法で, 視界がよければ,高度を高くとり遠方の目印を目指せるが, 視界が悪いときはなるべく遠方の目印を確保するため,低空飛翔となると考えられる.


3.ねぐらへ向かうカラスの集団数が多いほど, 飛翔高度が高い傾向が見られた. カラスはワシタ類などの天敵や猟銃などによる攻撃を受けた場合は, 直ちに飛翔ルートを変更し, 攻撃を回避する必要がある.地面近くの低空を集団で飛翔していると, 回避行動をとる際, 仲間や地面との衝突の可能性が高くなる. 集団全体としての回避行動をとり易くするため, 飛翔高度を高く保つ必要があると考える.



BINOS vol.10:61-63(2003)
タインワンリスに樹皮をかじられた木が枯死する割合
藤田薫・篠原由紀子


【要 約】


タイワンリスに樹皮をかじられた木とかじられなかった木の生死を,かじられてから2~4年後に調査した.
タイワンリスにかじられたことにより,木本体が枯死したのは,かじられた木の1.6%であった.
かじられずに自然に枯れた木は1.4%であった.
枯死率は,自然に枯死したものと,かじられたことが理由で枯死したものとの間で有意な違いはなかった(二項検定P=0.511).


BINOS vol.10:65-74(2003)
ノスリの繁殖期6ヶ月間の観察記録-特に,子殺しと餌について-
吉田嗣郎

【要 約】


秦野市周辺地域で2002年2月から7月にかけて,産卵から巣立ちまで約6カ月間、監視カメラによってノスリの繁殖活動を観察した。


1.2月28日に巣材運び、3月18日に第1卵、21日に第2卵、23日に第3卵の産卵が確認された。
 4月22日に第1子と第2子、25日に第3子が孵化した。
 5月17日に第3子が死亡したが、これは餌を咽に詰まらせて弱ったところを♀親、続いて兄弟が
食べたものである。
 6月1日に第1子、4日に第2子の枝移り、6月7日に第1子が上の木の枝に移動、8日に第2子巣立ちが確認された。


2.ノスリが育雛期間中に捕獲するモグラの数が餌の総数238に対して123頭と抜きん出て多く,50%を超えていた。
 1998年に近隣で観察したオオタカの場合と比べると、オオタカでは鳥類の占める割り合いが77%であったので、対照的であり、両種の棲み分けを可能にしていると考えられた。



BINOS vol.10:75-82(2003)
横浜市栄区における環境変遷と最近の鳥類相の特色
君塚純雄



BINOS vol.10:83-98(2003)
相模川中流域の人工中洲におけるコアジサシの繁殖について
北條文彦



BINOS vol.10:99-108(2003)
大磯町西部虫窪地区における冬季のアオバトの観察記録(2003年)
こまたん

【要 約】


1.虫窪地区で12羽のアオバトを偶然目撃したことを発端に越冬観察は2003年2月6日からアオバトの出現が見られなくなった同年4月12日まで行った.


2.アオバトが飛来する林の周辺,林を縦断する道路上,林内部の複数の観察地点にメンバーを配置して観察を行った.


3.林内の道路上の観察者が,ドングリが豊富に落ちている林の中へアオバトの飛来と地上降下を確認できたが,地上採餌は確認出来なかった.


4.アオバトは午前中殆ど飛来せず午後になって飛来回数が多くなる傾向がみられた.


5.観察中アオバトを捕食対象とするオオタカ等タカ類が頻繁に出現した.3月9日のように両者の出現する時間帯に差がみられた日もあった.
 その後,♀若鳥が捕食された食痕(羽根散乱)を発見した.


6.越冬個体と思われるアオバトは12羽と思われ,観察期間中(3/29の群は除く)12羽の群は計3回,10羽の群1回が観察された.


7.最大羽数は3月29日に観察した,移動中と思われる群の24羽だった.


8.アオバトが見られたのは2月7日から3月29日までであった.



BINOS vol.10:109-110(2003)
イソシギによるイチモンジセセリの捕食
竹内 裕


BINOS vol.10:111-112(2003)
相模原貯水池におけるコシジロウミツバメの観察
石田スーザン



BINOS vol.10:113-114(2003)
酒匂川に飛来したツクシガモ
頼ウメ子



BINOS vol.10:115-116(2003)
多摩川河口で観察された希少鳥3種につい
湯川廣司



BINOS vol.10:117-120(2003)
神奈川県におけるカワウの分布状況(第4報)
日本野鳥の会神奈川支部



BINOS vol.10:121-122(2003)
神奈川県内における鳥類の写真記録 7
日本野鳥の会神奈川支部鳥類目録編集委員会



BINOS vol.10:123-139(2003)
神奈川県における定線センサスの結果(2002年)
日本野鳥の会神奈川支部



BINOS vol.10:141-169(2003)
「神奈川カワウ調査フォーラム」の記録
日本野鳥の会神奈川支部