小特集 サギ山伐採事件をめぐって
葉山久世・葉山嘉一・石井隆:伊勢原市高森サギ山伐採事件について─ 1
高橋満彦:営巣木の伐採は鳥獣保護法違反か―実例から見る行政刑法の若干の問題点- 19
葉山嘉一・葉山久世:コロニーを破壊されたサギ類の繁殖後期および翌年の行動特性について ─ 27
論 文
かしの木山自然公園愛護会野鳥部会:町田市の住宅地におけるツミ
Accipiter gularis の繁殖生態─ 35
山口喜盛:神奈川県におけるガビチョウの野生化について─ 43
田淵俊人:神奈川県相模湖町内郷地区の野鳥 ─ 51
中川博史:緑区鴨居付近の鶴見川における鳥類 ─ 65
頼ウメ子:小田原市におけるツバメの繁殖状況 ─ 87
観察記録
北條文彦:相模川におけるコアジサシの繁殖状況について─ 95
竹内 裕:カイツブリの繁殖の小観察 ─107
宮脇佳郎・阿部 宏:横須賀市武山におけるアカハラダカの記録 ─111
森岡照明:横浜市青葉区藤が丘で撮影されたハイタカ属の同定 ─115
山田文則:平塚市上平塚におけるムクドリのねぐら調査 ─119
菅野與志美:半人工営巣用樹木によるコゲラの観察記録 ─127
調査記録
日本野鳥の会神奈川支部:横浜市南本牧埠頭におけるコアジサシの繁殖状況(第2報)─133
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県におけるカワウの分布状況(第1報)─135
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県における定線調査の結果(1999年)─144
支部活動
1998年の神奈川支部行事─153
1998年の保護研究部の活動─157
葉山久世・葉山嘉一・石井隆:伊勢原市高森サギ山伐採事件について
【摘要】
1999年7月に伊勢原市で発生した,約600羽のサギ類コロニーが樹木ごと破壊された事件について経過と問題点・今後の対応などをまとめた。
1.破壊されたコロニーは、ダイサギ・コサギ・アマサギ・ゴイサギの繁殖が確認された約600羽
程度のコロニーである。
2.行政や警察が対応したが、伐採は強行された。神奈川県の法解釈では
「伐採が原因となる雛や卵への損傷が確認されない限り違法性は問えない」という
判断があった。
3.環境庁は、事件後1999年9月30日に、伐採が雛や卵の損傷を与える事が明白な
場合は鳥獣保護法1条の4、2条に抵触するという判断をした。
4.落下した85羽の雛は、行政や野鳥の会のボランテイアで保護され放鳥された。
5.かながわトラスト財団に土地の確保を打診したが、トラストには緊急時に対応する
土地買い取りの制度が無く、実現しなかった。
6.サギ類のコロニーは、地元住民とトラブルが起こる可能性が高いので、情報の収集と
トラブルが生じない場所の確保が重要である。
資料①
緑政第132号
平成11年9月20日
環境庁自然保護局野生生物課
鳥獣保護業務室長 殿
神奈川県環境農政部長
鳥獣保護及狩猟二関スル法律の適応に関する疑義について(照会)
ゴイサギ(狩猟鳥)、コサギ、アマサギ、ダイサギの繁殖する集団営巣地において、雛の殺傷や卵の損傷が当然に予想される状況で営巣木を伐採した場合、その行為は鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に違反する行為に該当するか否かご教示願いたく照会します。
事務担当は緑政課野生生物班
〒231-8588 横浜市中区日本大通1
TEL 045-201-1111(内線3854)
FAX 045-212-8360
(参考)神奈川県伊勢原市高森におけるサギ集団営巣木の伐採について
神奈川県伊勢原市内にコサギ、ダイサギ、アマサギ、及びゴイサギの集団営巣地となっている広葉樹、竹、笹やぶ等からなる林(面積約4,600㎡)があった。
夕方にゴイサギを除いて約230羽が帰巣していることを確認したことがあった。
サギ類が卵やヒナを育てている最中の6月下旬に伐採作業が開始された。
このため、県職員や自然保護団体が伐採業者や地主に営巣中は伐採しないように指導し、業者は伐採を中断した。
その約2週間後の7月初旬に業者は伐採を再開し、県職員の指導を聞き入れず、約5日間で営巣地の大部分を伐採した。
県職員は伐採により落下したヒナの保護捕獲を実施し、85羽のヒナを保護した。
------------------------------------------------------------------
資料②
環自野第456号
平成11年9月30日
神奈川県環境農政部長 殿
環境庁自然保護局野生生物課
鳥獣業務室長
鳥獣保護及狩猟二関スル法律の適応に関する疑義について(回答)
平成11年9月20日付け緑政第132号で照会のあった標記について、下記のとおり回答する。
記
行為者が、営巣木に現に雛又は卵が存在し、その営巣木を伐採することによりそれらが落下し、殺傷又は損傷を与える事が明白である場合に、それを認識しつつ伐採を行ったときは、その対象が狩猟鳥獣以外の雛であれば鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第1条ノ4第1項に、狩猟鳥獣類の雛及び鳥類の卵であれば同法第2条に抵触するものと考えられる。
高橋満彦:営巣木の伐採は鳥獣保護法違反か
【摘要】
1999年7月に伊勢原市で発生した,鷺山の伐採事件では,営巣木の伐採行為を鳥獣保護法で規制できるかに疑義があったが,事件を契機に同年9月,環境庁より「行為者が営巣木に現に雛又は卵が存在し,その営巣木を伐採することによりそれが落下し,殺傷又は損傷を与えることが明白である場合に,それを認識しつつ伐採を行ったときは(中略)鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(中略)に抵触する」との通達が出た.通達は法目的に則しており,実務上の効果が期待されるが,あいまいな刑罰法規は好ましくなく,早急に立法による手当てが必要である.
葉山嘉一・葉山久世:コロニーを破壊されたサギ類の繁殖後期および翌年の行動特性について
【摘要】
神奈川県伊勢原市高森のサギコロニーについて,営巣地の樹林破壊後のサギの行動特性を明らかにするため,1999年10月と2000年3月から4月に定点調査を行った.
1.樹林破壊後にサギ類は,残された樹林と隣接樹林にとどまって繁殖期間を過ごし,
一部の番は再営巣を試み繁殖に成功した.
2.10月の渡り時期になると,破壊された樹林にも他地域からた新たなサギ類が渡来しねぐらの
種構成や個体数に若干変化が認められた.
3.10月13日までには短期間に総ての個体が繁殖地を去った.
4.翌年の繁殖期の開始時点では,約1ヶ月にわたって多くのシラサギ類が破壊されたコロニー
の樹林を目指して飛来した.
5.飛来した多くのサギ類は破壊された樹林地上空で偵察飛翔した後飛去した.
6.サギ類の飛翔行動から,破壊された樹林地が前年の繁殖場所であることを認知している
ことが予想された.
7.周辺部も含めて,翌年の繁殖にはこの地域はサギ類の営巣に利用されなかった.
かしの木山自然公園愛護会野鳥部会
町田市の住宅地におけるツミAccipitergularis の繁殖生態 【摘要】
1.東京都町田市南部の住宅地において2000年4月中旬から7月中旬にかけてツミ
Accipitergularis の繁殖を継続観察することができたので報告する.
2.営巣地は,標高60m程の丘陵地の縁にある,約25m×15mの小さい雑木林である.
まわりは,全て住宅地で囲まれていた.営巣地を中心として半径250mの円内では,
畑地や小さな雑木林が10.5%,川が3.2%,残りの86.3%は住宅地で占められていた.
3.巣は,樹高10m,胸高直径46cmのクロマツの地上9mの所に作られていた.
クロマツの上部 の枝が,横向きにT字型に分かれている部分にできており,真下より見た
感じでは少し不安 定なように見えた.樹枝上に小枝を積み重ねて作られてあり,巣の
上部にはサワラの青葉が よく認められた.
4.抱卵が約1ヶ月行われ,6月2日に最初の雛が孵化した.合計で5羽の雛の孵化が確認できた.
孵化後,19日たつと,巣から数m離れた枝まで移動する雛が観察された.
孵化後,27日 たつと,営巣地である雑木林周辺を飛び回るようになった.
5.孵化して2日後の6月4日の終日観察では,少なくとも7回の給餌が見られた.
給餌間隔は,平均すると103分であった.餌は,おもに♂が取り営巣地周辺に運んで来て,
♂は鳴いて♀に知らせ,♀がそれに応えて,おもに巣以外の場所に餌を取りに行っていた.
餌を渡す場所は,巣の東側にあるサワラの枝上が,よく観察された.また,♂は巣に近づく
他種の鳥類を追い払っていた.♀は,♂から餌を受け取り,雛に給餌をし,あとは,ほとんど
雛を抱いていた.
♂は,給餌を行わなかった.
6.孵化して16日後の6月18日の終日観察では,少なくとも10回の給餌が見られた.
給餌間隔は, 平均すると84分であった.6月4日と比べると,♂ の役割は,ほとんど
変わりないが,♀は,巣にいる時間が,ほとんど給餌の時だけになり,後は,巣にはいなかった.
ただ,営巣地周辺にいることは確かであると推定された.
7.巣の東側のサワラの枝上で,♂が取ってきた餌である小鳥類の頭と翼を落とし,残りの部分
から羽毛をむしり取る行動が,よく見られた.また,貯食の可能性のある行動が見られた.
8.餌の種類は,不明が約50%,スズメが28.1%,小鳥類が15.6%であった.スズメは,
住宅街で繁殖するツミの主要な餌であると推定された.
9.育雛期における1日の獲物の運搬回数が,孵化後の日数に比例すると考えると,3羽とも
巣を離れた25日目を巣立ちとして,2日目に7回,16日目に10回の給餌があったので,
巣立ちまでの中間にあたる13日目には9.35回の給餌が期待される.従って,育雛期間中の
獲物の総数は,9.35× 25=233羽と推定された.
山口喜盛:神奈川県におけるガビチョウの野生化について
【摘要】
近年増加の目立つ帰化鳥であるガビチョウについて,神奈川県における分布や生態を調査した.
1.神奈川県での分布は,北部を中心に丹沢山地とその山麓,箱根,大磯丘陵まで広がっており,
山地と丘陵に分布していた.
2.落葉広葉樹林,低木林のほか,耕作地周辺などでも記録され,茂みの中で行動していることが
多かった.
3.年間を通して囀りが聞かれ,他の種類の鳴きまねも記録された.
4.繁殖期には2羽で,非繁殖期には小群で行動し,木の実のほか昆虫を食べるのが観察された.
田淵俊人:神奈川県相模湖町内郷地区の野鳥
【摘要】
1999年1月から2000年6月までの期間,神奈川県津久井郡相模湖町の内郷地区における鳥類について,ラインセンサス法を用いて総合計102回の調査を行ない,観察された種,個体数,繁殖の有無を記録した.結果は以下のように要約される.
1.調査期間中に総合計33科99種の鳥類を確認した.なお,飼い鳥がもとになったと考えら
れている帰化鳥類のガビチョウも年間を通して観察された.
2.調査地区において観察種数が多かった月は1月から2月の冬期,5月から6月の初夏,
および10月の秋の渡りの時期で,これらの時期には1ヵ月間にのべ49種から56種を確認した.
その一方で7月から9月の夏期および11月から12月の晩秋から冬期にかけては,1ヵ月間に
観察される鳥類の種数が少なかった.
3.各月において個体数が最も多かったのは3月の春の渡りの時期で,1回の調査で平均850羽が
記録され,9月の秋の渡りの時期にも一時的に500羽前後まで増加することが確認された.
しかし,初夏から夏期に向かっては観察される個体数は最も少なかった.
4.繁殖期に最も優占度の高かった鳥類はスズメで24%を占めた.ツバメ,イワツバメなどの
ツバメ科の鳥類も両種を合わせて18%の優占度を占めた.
しかし,本調査地域の環境から考えて出現が期待された夏鳥のクロツグミやセンダイムシクイ
などのヒタキ科の鳥類の優占度は極めて低かった.
5.越冬期にはスズメとカワラヒワがそれぞれ16%の優占度を占めた.さらに相模湖町の
鳥であるオシドリにマガモ,カルガモ,ホシハジロを合わせたカモ科鳥類が集結するため,
合計で8%強の優占度を占めていた.
なお,カシラダカ,オシドリ,およびタカ科の鳥類は,渡りの季節になると調査地域内に
集結するため,一時的に優占度が高くなった.
6.調査地域において繁殖が確認,あるいは可能性のある鳥類種は46種であった.
この数は調査期間中に観察された鳥類99種の約半数に相当した.
7.今後はさらに継続して同地域のラインセンサスを行なうと同時に,この地域に特徴的で
あったカワウ,オシドリ,タカ類,カワセミ類,カラス類,帰化種のガビチョウの動向について
さらに重点的な調査が必要であると考えられた.
中川博史:緑区鴨居付近の鶴見川における鳥類
【摘要】
1.都市部を流れる鶴見川の落合橋から鴨池橋付近を中心に,1991年8月から2000年
6月まで鳥 類を観察した.1996年11月から2000年6月には,落合橋~鴨池橋間の
幅約50mの範囲とその上空に現れた鳥類の個体数調査も実施した.落合橋から 鴨池橋
までの両堤防間の範囲とその 上空を観察地とし,観察地内で記録した種数 をみると,
26科62種と5帰化種であった.
調査 で記録された種については,各種の月ごとの出現率(%)・平均個体数 (羽)を算出した.
2.1996年11月から2000年6月の調査において,出現率の平均が50%を超える月が
3ヶ月以上ある種を当地の主要種と呼ぶことにすると,12科18種が該当した.
3.毎年出現していたのに最近出現が途絶えた種にハシビロガモがあった.以前には記録が
なかったのに最近毎年出現している種にオオジュリンとツリスガラがあった.
4.1996年11月~1997年10月までの期間をⅠ期,1999年7月~2000年6月までをⅡ期とし,
Ⅰ期・Ⅱ期の調査結果から,期ごとの平均個体数を求め,3倍以上になった種を増加,
1/3以下になった種を減少とした.その結果,増加種にはハシボソガラス・タシギ・
シジュウカラ・キセ キレイ・ツグミ・タヒバリの6種と2帰化種が,減少種にはダイサギ・
ハシビロガモの2種が該当した.
増加と関係のありそうな現象としては周辺開発・水際や堤防内側の斜面にわずかに草が
増えたことなどがあった.
減少と関係のありそうな現象としては小ぶりの魚の減少・橋の架け替えで水が濁ったことがあった.
5.増加・減少種以外にも,周辺開発と時を同じくして出現状況などに変化のあった種がいた.
6.流れや水際を利用する種が特に多かった.
頼ウメ子:小田原市におけるツバメの繁殖状況
【摘要】
1.1997年6月~7月に小田原市におけるツバメの営巣数を調べた結果、巣の数は656巣あった。
2.ツバメの営巣は酒匂川右岸地域で最も密度が高く、水田が周辺に点在する駅前の商店街で
特に多かった。
3.栢山地区では巣の位置は商店の1階部分に作られているものが多かった。
高橋満彦:営巣木の伐採は鳥獣保護法違反か―実例から見る行政刑法の若干の問題点- 19
葉山嘉一・葉山久世:コロニーを破壊されたサギ類の繁殖後期および翌年の行動特性について ─ 27
論 文
かしの木山自然公園愛護会野鳥部会:町田市の住宅地におけるツミ
Accipiter gularis の繁殖生態─ 35
山口喜盛:神奈川県におけるガビチョウの野生化について─ 43
田淵俊人:神奈川県相模湖町内郷地区の野鳥 ─ 51
中川博史:緑区鴨居付近の鶴見川における鳥類 ─ 65
頼ウメ子:小田原市におけるツバメの繁殖状況 ─ 87
観察記録
北條文彦:相模川におけるコアジサシの繁殖状況について─ 95
竹内 裕:カイツブリの繁殖の小観察 ─107
宮脇佳郎・阿部 宏:横須賀市武山におけるアカハラダカの記録 ─111
森岡照明:横浜市青葉区藤が丘で撮影されたハイタカ属の同定 ─115
山田文則:平塚市上平塚におけるムクドリのねぐら調査 ─119
菅野與志美:半人工営巣用樹木によるコゲラの観察記録 ─127
調査記録
日本野鳥の会神奈川支部:横浜市南本牧埠頭におけるコアジサシの繁殖状況(第2報)─133
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県におけるカワウの分布状況(第1報)─135
日本野鳥の会神奈川支部:神奈川県における定線調査の結果(1999年)─144
支部活動
1998年の神奈川支部行事─153
1998年の保護研究部の活動─157
葉山久世・葉山嘉一・石井隆:伊勢原市高森サギ山伐採事件について
【摘要】
1999年7月に伊勢原市で発生した,約600羽のサギ類コロニーが樹木ごと破壊された事件について経過と問題点・今後の対応などをまとめた。
1.破壊されたコロニーは、ダイサギ・コサギ・アマサギ・ゴイサギの繁殖が確認された約600羽
程度のコロニーである。
2.行政や警察が対応したが、伐採は強行された。神奈川県の法解釈では
「伐採が原因となる雛や卵への損傷が確認されない限り違法性は問えない」という
判断があった。
3.環境庁は、事件後1999年9月30日に、伐採が雛や卵の損傷を与える事が明白な
場合は鳥獣保護法1条の4、2条に抵触するという判断をした。
4.落下した85羽の雛は、行政や野鳥の会のボランテイアで保護され放鳥された。
5.かながわトラスト財団に土地の確保を打診したが、トラストには緊急時に対応する
土地買い取りの制度が無く、実現しなかった。
6.サギ類のコロニーは、地元住民とトラブルが起こる可能性が高いので、情報の収集と
トラブルが生じない場所の確保が重要である。
資料①
緑政第132号
平成11年9月20日
環境庁自然保護局野生生物課
鳥獣保護業務室長 殿
神奈川県環境農政部長
鳥獣保護及狩猟二関スル法律の適応に関する疑義について(照会)
ゴイサギ(狩猟鳥)、コサギ、アマサギ、ダイサギの繁殖する集団営巣地において、雛の殺傷や卵の損傷が当然に予想される状況で営巣木を伐採した場合、その行為は鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に違反する行為に該当するか否かご教示願いたく照会します。
事務担当は緑政課野生生物班
〒231-8588 横浜市中区日本大通1
TEL 045-201-1111(内線3854)
FAX 045-212-8360
(参考)神奈川県伊勢原市高森におけるサギ集団営巣木の伐採について
神奈川県伊勢原市内にコサギ、ダイサギ、アマサギ、及びゴイサギの集団営巣地となっている広葉樹、竹、笹やぶ等からなる林(面積約4,600㎡)があった。
夕方にゴイサギを除いて約230羽が帰巣していることを確認したことがあった。
サギ類が卵やヒナを育てている最中の6月下旬に伐採作業が開始された。
このため、県職員や自然保護団体が伐採業者や地主に営巣中は伐採しないように指導し、業者は伐採を中断した。
その約2週間後の7月初旬に業者は伐採を再開し、県職員の指導を聞き入れず、約5日間で営巣地の大部分を伐採した。
県職員は伐採により落下したヒナの保護捕獲を実施し、85羽のヒナを保護した。
------------------------------------------------------------------
資料②
環自野第456号
平成11年9月30日
神奈川県環境農政部長 殿
環境庁自然保護局野生生物課
鳥獣業務室長
鳥獣保護及狩猟二関スル法律の適応に関する疑義について(回答)
平成11年9月20日付け緑政第132号で照会のあった標記について、下記のとおり回答する。
記
行為者が、営巣木に現に雛又は卵が存在し、その営巣木を伐採することによりそれらが落下し、殺傷又は損傷を与える事が明白である場合に、それを認識しつつ伐採を行ったときは、その対象が狩猟鳥獣以外の雛であれば鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律第1条ノ4第1項に、狩猟鳥獣類の雛及び鳥類の卵であれば同法第2条に抵触するものと考えられる。
高橋満彦:営巣木の伐採は鳥獣保護法違反か
【摘要】
1999年7月に伊勢原市で発生した,鷺山の伐採事件では,営巣木の伐採行為を鳥獣保護法で規制できるかに疑義があったが,事件を契機に同年9月,環境庁より「行為者が営巣木に現に雛又は卵が存在し,その営巣木を伐採することによりそれが落下し,殺傷又は損傷を与えることが明白である場合に,それを認識しつつ伐採を行ったときは(中略)鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(中略)に抵触する」との通達が出た.通達は法目的に則しており,実務上の効果が期待されるが,あいまいな刑罰法規は好ましくなく,早急に立法による手当てが必要である.
葉山嘉一・葉山久世:コロニーを破壊されたサギ類の繁殖後期および翌年の行動特性について
【摘要】
神奈川県伊勢原市高森のサギコロニーについて,営巣地の樹林破壊後のサギの行動特性を明らかにするため,1999年10月と2000年3月から4月に定点調査を行った.
1.樹林破壊後にサギ類は,残された樹林と隣接樹林にとどまって繁殖期間を過ごし,
一部の番は再営巣を試み繁殖に成功した.
2.10月の渡り時期になると,破壊された樹林にも他地域からた新たなサギ類が渡来しねぐらの
種構成や個体数に若干変化が認められた.
3.10月13日までには短期間に総ての個体が繁殖地を去った.
4.翌年の繁殖期の開始時点では,約1ヶ月にわたって多くのシラサギ類が破壊されたコロニー
の樹林を目指して飛来した.
5.飛来した多くのサギ類は破壊された樹林地上空で偵察飛翔した後飛去した.
6.サギ類の飛翔行動から,破壊された樹林地が前年の繁殖場所であることを認知している
ことが予想された.
7.周辺部も含めて,翌年の繁殖にはこの地域はサギ類の営巣に利用されなかった.
かしの木山自然公園愛護会野鳥部会
町田市の住宅地におけるツミAccipitergularis の繁殖生態 【摘要】
1.東京都町田市南部の住宅地において2000年4月中旬から7月中旬にかけてツミ
Accipitergularis の繁殖を継続観察することができたので報告する.
2.営巣地は,標高60m程の丘陵地の縁にある,約25m×15mの小さい雑木林である.
まわりは,全て住宅地で囲まれていた.営巣地を中心として半径250mの円内では,
畑地や小さな雑木林が10.5%,川が3.2%,残りの86.3%は住宅地で占められていた.
3.巣は,樹高10m,胸高直径46cmのクロマツの地上9mの所に作られていた.
クロマツの上部 の枝が,横向きにT字型に分かれている部分にできており,真下より見た
感じでは少し不安 定なように見えた.樹枝上に小枝を積み重ねて作られてあり,巣の
上部にはサワラの青葉が よく認められた.
4.抱卵が約1ヶ月行われ,6月2日に最初の雛が孵化した.合計で5羽の雛の孵化が確認できた.
孵化後,19日たつと,巣から数m離れた枝まで移動する雛が観察された.
孵化後,27日 たつと,営巣地である雑木林周辺を飛び回るようになった.
5.孵化して2日後の6月4日の終日観察では,少なくとも7回の給餌が見られた.
給餌間隔は,平均すると103分であった.餌は,おもに♂が取り営巣地周辺に運んで来て,
♂は鳴いて♀に知らせ,♀がそれに応えて,おもに巣以外の場所に餌を取りに行っていた.
餌を渡す場所は,巣の東側にあるサワラの枝上が,よく観察された.また,♂は巣に近づく
他種の鳥類を追い払っていた.♀は,♂から餌を受け取り,雛に給餌をし,あとは,ほとんど
雛を抱いていた.
♂は,給餌を行わなかった.
6.孵化して16日後の6月18日の終日観察では,少なくとも10回の給餌が見られた.
給餌間隔は, 平均すると84分であった.6月4日と比べると,♂ の役割は,ほとんど
変わりないが,♀は,巣にいる時間が,ほとんど給餌の時だけになり,後は,巣にはいなかった.
ただ,営巣地周辺にいることは確かであると推定された.
7.巣の東側のサワラの枝上で,♂が取ってきた餌である小鳥類の頭と翼を落とし,残りの部分
から羽毛をむしり取る行動が,よく見られた.また,貯食の可能性のある行動が見られた.
8.餌の種類は,不明が約50%,スズメが28.1%,小鳥類が15.6%であった.スズメは,
住宅街で繁殖するツミの主要な餌であると推定された.
9.育雛期における1日の獲物の運搬回数が,孵化後の日数に比例すると考えると,3羽とも
巣を離れた25日目を巣立ちとして,2日目に7回,16日目に10回の給餌があったので,
巣立ちまでの中間にあたる13日目には9.35回の給餌が期待される.従って,育雛期間中の
獲物の総数は,9.35× 25=233羽と推定された.
山口喜盛:神奈川県におけるガビチョウの野生化について
【摘要】
近年増加の目立つ帰化鳥であるガビチョウについて,神奈川県における分布や生態を調査した.
1.神奈川県での分布は,北部を中心に丹沢山地とその山麓,箱根,大磯丘陵まで広がっており,
山地と丘陵に分布していた.
2.落葉広葉樹林,低木林のほか,耕作地周辺などでも記録され,茂みの中で行動していることが
多かった.
3.年間を通して囀りが聞かれ,他の種類の鳴きまねも記録された.
4.繁殖期には2羽で,非繁殖期には小群で行動し,木の実のほか昆虫を食べるのが観察された.
田淵俊人:神奈川県相模湖町内郷地区の野鳥
【摘要】
1999年1月から2000年6月までの期間,神奈川県津久井郡相模湖町の内郷地区における鳥類について,ラインセンサス法を用いて総合計102回の調査を行ない,観察された種,個体数,繁殖の有無を記録した.結果は以下のように要約される.
1.調査期間中に総合計33科99種の鳥類を確認した.なお,飼い鳥がもとになったと考えら
れている帰化鳥類のガビチョウも年間を通して観察された.
2.調査地区において観察種数が多かった月は1月から2月の冬期,5月から6月の初夏,
および10月の秋の渡りの時期で,これらの時期には1ヵ月間にのべ49種から56種を確認した.
その一方で7月から9月の夏期および11月から12月の晩秋から冬期にかけては,1ヵ月間に
観察される鳥類の種数が少なかった.
3.各月において個体数が最も多かったのは3月の春の渡りの時期で,1回の調査で平均850羽が
記録され,9月の秋の渡りの時期にも一時的に500羽前後まで増加することが確認された.
しかし,初夏から夏期に向かっては観察される個体数は最も少なかった.
4.繁殖期に最も優占度の高かった鳥類はスズメで24%を占めた.ツバメ,イワツバメなどの
ツバメ科の鳥類も両種を合わせて18%の優占度を占めた.
しかし,本調査地域の環境から考えて出現が期待された夏鳥のクロツグミやセンダイムシクイ
などのヒタキ科の鳥類の優占度は極めて低かった.
5.越冬期にはスズメとカワラヒワがそれぞれ16%の優占度を占めた.さらに相模湖町の
鳥であるオシドリにマガモ,カルガモ,ホシハジロを合わせたカモ科鳥類が集結するため,
合計で8%強の優占度を占めていた.
なお,カシラダカ,オシドリ,およびタカ科の鳥類は,渡りの季節になると調査地域内に
集結するため,一時的に優占度が高くなった.
6.調査地域において繁殖が確認,あるいは可能性のある鳥類種は46種であった.
この数は調査期間中に観察された鳥類99種の約半数に相当した.
7.今後はさらに継続して同地域のラインセンサスを行なうと同時に,この地域に特徴的で
あったカワウ,オシドリ,タカ類,カワセミ類,カラス類,帰化種のガビチョウの動向について
さらに重点的な調査が必要であると考えられた.
中川博史:緑区鴨居付近の鶴見川における鳥類
【摘要】
1.都市部を流れる鶴見川の落合橋から鴨池橋付近を中心に,1991年8月から2000年
6月まで鳥 類を観察した.1996年11月から2000年6月には,落合橋~鴨池橋間の
幅約50mの範囲とその上空に現れた鳥類の個体数調査も実施した.落合橋から 鴨池橋
までの両堤防間の範囲とその 上空を観察地とし,観察地内で記録した種数 をみると,
26科62種と5帰化種であった.
調査 で記録された種については,各種の月ごとの出現率(%)・平均個体数 (羽)を算出した.
2.1996年11月から2000年6月の調査において,出現率の平均が50%を超える月が
3ヶ月以上ある種を当地の主要種と呼ぶことにすると,12科18種が該当した.
3.毎年出現していたのに最近出現が途絶えた種にハシビロガモがあった.以前には記録が
なかったのに最近毎年出現している種にオオジュリンとツリスガラがあった.
4.1996年11月~1997年10月までの期間をⅠ期,1999年7月~2000年6月までをⅡ期とし,
Ⅰ期・Ⅱ期の調査結果から,期ごとの平均個体数を求め,3倍以上になった種を増加,
1/3以下になった種を減少とした.その結果,増加種にはハシボソガラス・タシギ・
シジュウカラ・キセ キレイ・ツグミ・タヒバリの6種と2帰化種が,減少種にはダイサギ・
ハシビロガモの2種が該当した.
増加と関係のありそうな現象としては周辺開発・水際や堤防内側の斜面にわずかに草が
増えたことなどがあった.
減少と関係のありそうな現象としては小ぶりの魚の減少・橋の架け替えで水が濁ったことがあった.
5.増加・減少種以外にも,周辺開発と時を同じくして出現状況などに変化のあった種がいた.
6.流れや水際を利用する種が特に多かった.
頼ウメ子:小田原市におけるツバメの繁殖状況
【摘要】
1.1997年6月~7月に小田原市におけるツバメの営巣数を調べた結果、巣の数は656巣あった。
2.ツバメの営巣は酒匂川右岸地域で最も密度が高く、水田が周辺に点在する駅前の商店街で
特に多かった。
3.栢山地区では巣の位置は商店の1階部分に作られているものが多かった。